4章・(6)-2 円高、円安と商売の関係
・低い評価で満足している日本という倒錯
では、一般的に円高が悪とされる根拠は何でしょうか。それは、日本の産業構造にあります。簡単にいうと日本は、「海外にモノを輸出して販売して儲ける」商売を国全体で推進しているところです。円高は通貨が高評価を受けることなので、好ましいことであるはずなのに、日本という国の商売が「海外にモノを輸出する」ことを前提に設計されているので、そうはならないのです。
もう一度この構図を見てみましょう。
- <円安状態>1ドル=100円 ←→ <円高状態>1ドル=80円
この円高の側の数式を、ちょっと手を加えてみます。ドルではなく、円にあわせてみましょう。
- <円安状態>1ドル=100円 ←→ <円高状態>1.25ドル=100円
同じ100円の商品を販売するときであっても、円安のときは1ドルしかもらえないのに、円高のときは1.25ドルももらえることになるのです。自国通貨が低く評価されているために、逆説的にドルをたくさんもらえる――、たくさん儲かる――、というわけでした。これが、輸出立国である日本のなかで「円高」が求められ、「円安」が忌み嫌われていた、唯一の理由です。
しかし、この円高嫌いが正しいかは、私は怪しいと思っています。以前の章でも書いたとおり、自国通貨の高い評価を嫌うこと、日本人の労働が高く評価されることを拒否続けることは、おかしなことだからです。むしろ、輸出頼みの産業構造自体がおかしいのではないか。
円高を嫌う報道を聞きながらも、そんなことを考えてみてほしいのです。