3章・(4)-1 なぜ黒字なのに倒産してしまうのか?
キーワード「倒産」「決算書上のお金」「実際の利益」
・倒産ララバイ
倒産はときに、黒字の会社でおきます。
なぜでしょうか。これは、さきほどまで説明してきた支払い時期のギャップによるものです。普通は黒字の会社と聞けば、順調と思うでしょう。倒産間近と考える人はなかなかいません。
しかし、私が少なからぬ会社の倒産に立ちあってわかったのは、社員のほとんどが「前日まで、会社が潰れるとは思わなかった」ということです。いつもの朝、会社に辿り着くと、会社に入ることができない社員が溢れています。あなたが会社の門に貼られた紙を見ると「本日から営業を停止しました」と書かれているわけです。ちょっとしたホラー映画よりも怖い状況かもしれません。
これを説明するために、前章でも少し触れた「決算書上の利益」と「ほんとうのお金」の違いを説明します。
- 決算書上の利益……売った瞬間に売上げと費用が計算される
- ほんとうのお金……売った瞬間にお金が入ってくるとは限らず、かつ売る前に仕入れ代金は支払っている
決算書上は、売ったときにお金が入り同時にお金が出て行くという前提になっています。しかし、これまで見てきた通り、売ったからといってすぐにお金をもらえるわけではありません。それに、仕入れ代金のほうはすぐに支払っているとしたら、二重の苦しみを味わうことになります。だから、表面上は利益が出ているように思えるのに、実際の会社は火の車で、いつのまにか倒産してしまうということが起きるわけです。