調達業務のリスクマネジメント~東日本大震災の教訓 2章(3)-17

これはサプライヤーとの関係においても同様です。バイヤーの考える震災対応には、大きく分けてⅰ)サプライヤーが被災した場合と、ⅱ)自社が被災した場合の2つに分けられます。ⅱ)の場合は、バイヤー企業と同じ地域のサプライヤーも被災している可能性が高いために、ⅰ)と同時進行での対応が求められます。自社の被害が大きければ、それだけサプライヤーに依存する場面も多くなります。そんなときに、ほんとうに必要なサポートを得られるかどうか。

これは普段のサプライヤーとのリレーションの状態に大きく影響されます。バイヤーとして混乱の中にあれば、不完全な内容での依頼をサプライヤーへ行なうことになるでしょう。そんなときに、サプライヤー側が先回りして、要求以上の対応をしてくれる、それとも要求内容がよくわからないと捨て置かれるかはまったく異なります。同じ依頼をおこなって、その結果は天と地ほども差を生むことになるでしょう。サプライヤーに先回り、要求以上のアウトプットをして貰うためには、普段からサプライヤーとバイヤー企業間に大きな正義にもとづくリレーションの基盤作りがあるかどうかにかが重要なのです。

自社が生き残ってゆくために、サプライヤーに関わっていられないといった発言は、景気悪化の際に心ないバイヤーから繰り返し行なわれてきました。また過度に一社依存状態にあるサプライヤーは、そんな理不尽な発言にも口を閉ざすことを暗に求められ、結果コストダウン要求をのんできたのです。今回の震災で、バイヤー企業にとってサプライヤーがいかに大切かを、身をもって体験したはずです。これは、闇雲に発注金額を上げるといった小手先の対応を指すものではありません。ほんとうの正義とはなにか。このことをサプライヤーとバイヤー企業が胸襟を開いて自由に討議をして、双方納得した「ほんとうの正義」を見いだした瞬間、東日本大震災からのほんとうの復興へのスタートが切れるのではないかと考えています。

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