調達業務のリスクマネジメント~東日本大震災の教訓 1章(2)-10

震災後の情報確認におけるポイントは、待ちすぎず、攻めすぎない「頃合」です。そしてメールなのかそれとも電話なのかという方法論よりも、サプライヤー側の状況をできるだけ早く掌握し、個々の状況に応じた対応をおこなうことが必要です。震災直後、多くのバイヤーはすぐに情報収集を始めました。バイヤーの発する同じ一言でも、平常時のリレーションの状態によって、反応に大きな差が生まれてしまうのです。それは結果として、情報収集内容に影響を与えるのです。

「待ちすぎず」との観点では、震災発生後すぐにサプライヤーに連絡することも可能です。今回の震災でも「お見舞い」と称したメールを全サプライヤーに震災直後に発信したケースもあります。最後に一文だけ、情報提供をお願いする内容を加えます。電話の場合、ポイントはその会話内容です。「攻めすぎず」との観点で、いきなり納期や生産状況を確認することは、サプライヤー側に「自分(=発注側)さえ良ければいいのか」といった不信感を抱かせます。程度の差こそあれ、サプライヤー側は被災者であるとの前提に立って、相手への配慮が必要です。自社の被害が少ない場合、バイヤー企業内では関連部門から調達購買への「いつ、生産を再開できるのか」というプレッシャーは大きいでしょう。営業としては一刻も早い生産正常化によって顧客とのリレーションを維持し、さらに強化したいはずです。だからといって、被災し混乱の中にいるサプライヤーに、自社の都合を強く押し出すことはつつしまねばなりません。調達購買部門としては、遅々として情報収集が進まずに、サプライヤーと社内関連部門との板ばさみに悩む場面に必ずぶつかります。一刻も早い復旧を願わないサプライヤーはいません。震災直後の情報がなかなか集まらない段階では、一時的には調達購買部門の踏ん張りで社内からのサプライヤーへのプレッシャーをしのぐ必要があります。一方で、さほど被害の大きくないと判断できる地域のサプライヤーから、的確な情報提供がなかった場合は、毅然として情報提供を求める必要があります。前項でも述べた通り、被災者から脱却できるのであれば、一刻も早く立ち上がることをサプライヤーに求めましょう。

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