調達業務のリスクマネジメント~東日本大震災の教訓 2章(3)-18

コラム~企業がもつべき柔軟性

 

ある企業のバイヤーから、こんな話を聞きました。目の前に部品の供給停止が近づいているにもかかわらず、震災前に設定した生産計画を更新せずに残業し生産の前倒しを行なっているというものです。

本書では一貫して震災前と後は繋がっていることを述べてきました。ただ、今回に限らず震災の発生とその被害は、企業経営に一時的に大きな影響を与えます。その影響へ反応することは、短期的に、そして中長期的な企業経営へのマイナスのインパクトを少なくするためには必要です。操業計画を変更するには、組合への説明が必要だが、やっている時間が無く従来通りの操業を表向ききき続けているとの話してくれたバイヤーもいました。震災後の混乱を収拾するために、こんなときこそ労使協調が必要です。それにあれだけの被害を目の前にし、サプライチェーンの寸断がいわれる中、震災発生前の操業の保証をさけぶ労使関係であれば、それこそ平常時の関係構築に問題があったといわざるをえません。

今回の震災では、あらかじめ準備されたBCP計画が思うように機能しなかったとのコメントが多く寄せられました。それは当然です。事前の計画で、30mを越す津波を、これほどの広範囲にわたる被害を、そして原子力発電所の事故の発生まで含めて考えていたことなどあり得ないのです。事前の計画は、震災発生時にある程度の行動指針を与えてはくれます。しかし、その時々の置かれた状況では、やはりその場での意思決定、そして決定を実現する行動力と、事前に決定された内容にこだわらない柔軟性が必要です。そもそも想定していない事態が起こったのです。すべてにおいて、事前の計画にとらわれる理由がないのです。

今回の震災では、未曾有といわれる状況にどのように対処していくかという前例のない判断が求められました。そして、都度判断による行動という柔軟性が求められたといえます。未曾有の事態にセオリーは通用しない、都度判断し行動することも重要であると、今回の震災後の状況が物語っているのです。

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