5章-18:仕組み・組織体制
集中購買の思い出
私がたったの23歳だったころです。いきなり、拠点の代表として、交渉の場に行ってくれ、といわれました。全国から調達担当者が集まります。そして、交渉相手は取引先の代表者です。次期の使用量予想をもとに、集団で交渉するというわけです。
こう書けば簡単です。しかし、自分たちの拠点の、次期需要量なんてどうやってわかるでしょうか。しかたがないので、前期の発注額を調べてみました。それでも不安に感じたので、前々期の発注額も調べました。さらに、前々々期も調べました。それを三で割って、需要量を計算しました。
おそらくもっとも若かったからかもしれません。席上では、取引先の代表者から「その数の妥当性」をしつこく訊かれました。たぶん他の拠点も、私と違う計算根拠だったとは思いません。しかし、「その数量をもとに価格を改定するわけですけれど、まったく無根拠の数字だったら検討するに値しませんね」といわれました。
文字で書くと、先方は、まったく間違った発言とは思いません。ビジネスですから、その数字の正しさを問うのは当然ともいえます。それだけ真剣に受け止めてくれた、と解釈すべきでしょう。たとえ、その口調が意地悪なものだったとしても。
そのうえで冷静に反省すれば、少なくとも、私はせめて「こういう案件があるため、例年通りの発注は見込まれる」くらいは申し上げるべきでした。そして、各技術者に、簡単でもヒアリングをしておくべきでした。それも、非公式であってもかまいません。さらに時間もさほどかかりません。