5章-4:仕組み・組織体制
客先と現業部門が蜜月な関係にある場合は、意図的に「高め」に予算を設定しておきます。そうすると、調達金額の絶対値が安いわけではないのに、見た目上だけは、異常なコスト削減率になってしまうのです。
逆に、現業部門がうまくない場合は、ギリギリの予算で積み上げるために、調達・購買部門も、かなりギリギリの価格となり、相当がんばって交渉したとしても、それは評価されません。予算の達成は、どこの企業も必須だからです。もちろん、この意味の「うまくない」は一つの比喩です。
さらに問題は、現業部門が「うまい」場合は、あえて現業部門に「予算が甘いじゃないか」と伝える倫理観をもっていないと、高い見積書の取引先と交渉しないケースもありえます。さらには、調達・購買部門のなかで、「うわあ、あの担当者だから、今回の案件は厳しいぞ」とか「あの担当者だったら、客先とうまくやってくれるだろうから安心だ」という奇妙な会話がかわされます。
その結果、支出データを見てみると、同じような工事なのに、いっぽうは高く、いっぽうは安くなっているのです。さらに調達・購買部門がそれを放置している側面さえあります。運良く「うまい」担当者にあたったら、調達・購買部員の成績がよく、運悪く「へたな」担当者にあたったら、調達・購買部員の成績が悪いというわけです。
あえて書くまでもありませんが、「うまい」「へたな」とは皮肉で書いていますので、そのままの意味で捉えないでください。
そこで「予算基準の明確化、コスト削減基準の設定」の節が意味をもちます。理想論の順に、この対応策を述べていきます。