5章-2:仕組み・組織体制

調達に必要なのは誤解力か

私は職業柄、多くの中小企業と仕事をします。そして、ご存知の通り、かなりの比率の企業が事業継承で悩んでいます。ご子息がいるケースは大半ですが、そのご子息も、継ぎたくないというわけです。

現在では「自分探し」がさかんです。自分は何をやって生きるべきか。何を天命とすべきか。それを悩んでいるひとたちが、自己啓発セミナーや海外にいってヒントをもらおうとしているわけです。私は不思議でなりません。それほど、親の事業を継ぐのが明確であっても――それはいわゆる自分を探さずとも、自分の使命が明確であるにもかかわらず――誰も継ごうとしないのです。

以前、こういう小説を読んだことがあります。江戸時代に、三代、将軍に仕えて、そして将軍を暗殺するものです。三代も仕えれば、将軍一家からの信頼は相当なものですから、その末に殺してしまおうというわけです。一代目が計画をたて、そして、三代目が暗殺を実行します。

そのとき、二代目の役割はなんでしょうか。明確に、計画を隠しながら、将軍に仕えることです。さきの例でいえば、自分探しなどする時間もなく、なにもかもが明確です。ところが、その二代目こそが、もっとも生きる覇気を感じられません。なんという皮肉でしょうか。自分が明確であるほど、覇気がないとは。

いや、たぶん逆なのではないでしょうか。生きる充実、というものと、自分がなすべき使命というものは、きっと相反するものではないでしょうか。もっといえば、充実には、あらかじめ定められた使命感の欠如こそが重要なのです。きっと、仕事をしているうちに、これが自分にとっては重要なのだと思い込む「誤解力」こそ重要なはずです。

私はおなじく、職業柄、多くの芸能人と出会います。その際、お決まりのように「この世界に入ったのは偶然だった」といいます。はじめのころ、私はそれを嘘か冗談だと思っていました。「母親が勝手にオーディションに応募した」とか「友だちが事務所に勝手に写真を送った」とか。しかし、いまでは、それらの発言はほんとうなんだと思っています。

まったく自分探しなどせず、ただただ偶然に巻き込まれて、仕事を真摯に重ねた結果、いまの立場になっただけではないか。探した結果ではなく、気づいた結果に、天職があったのではないか。そう理解しています。

よく私は、「調達・購買をやっていて、これが私の仕事とは思えません」と、よく意見を聞きます。しかし、私は逆に訊いてみたいのです。「どれだけ真剣に試行錯誤したあとに、そんなことをいっているのか」と。自分探しなど意味をなしません。そんな時間があったら、目の前の仕事に全力投球して、法則を見つけ、仮説化のなかから論理を創り上げ、なんなら本でも書いてみたらどうでしょうか。そこまでしたら、結果的に、天命が見つかると私は確信しています。

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