第六回:開発購買での新規調達・購買取引先の開拓

新規調達・購買取引先の開拓は、新製品開発にとって不可欠な活動です。特に、技術開発が革新的であったりスピードが速かったりする業界では、現行の調達・購買取引先にとらわれず新規の取引先開拓が常に求められます。自社の製品にとっての戦略・重要部品や材料に関しては、この活動は非常に重要です。この新規取引先開拓の方法と新規取引先候補の評価の方法を開発購買の視点から、以下の通り説明します。

1.新規調達・購買取引先補の情報収集

日ごろから、アンテナを張って、次のような情報源を使い新規の取引先候補をみつける活動を行うことが必要です。ポイントは、「広く求める」、「来るものは拒まず」そして「敷居を低くする」です。

  • 異なる部品・材料を取り扱う取引先

例えば、金属加工の会社にプラスチック加工の会社を訊くなどがその例です。

  • 商社の活用

諸々の部品や材料をとりあつかっている商社は多種の部材メーカーの情報をもっています。また、その商社の取り扱い分野・製品ではないメーカーや商社の情報源にもなります。

  • 業界、公社などによる展示会

業界の展示会では、沢山の同種の部材のメーカーが展示をしています。業界企業の製品、新製品開発情報を効率的に収集できます。また、公社や製造業系専門誌などが主催する展示会では、さまざまな業種の会社が展示をしています。当社の方針や需要に沿った展示会社のブースでは質問して情報を広げたり、深堀したりしましょう。また、名刺交換をして後日面談しやすくすることも必要です。

  • 特定の分野の部品や材料の業界の専門誌・新聞など

これらの専門誌や新聞などでは新規の製品、部品や材料の情報や、メーカー・商社の情報が豊富に掲載されています。

  • 取引先市場への発信

自社のホームページに調達・購買のサイトを設ける方法です。オープンで公平な調達・購買取引をおこなっていることをアピールできます。新規参入の敷居が高いという印象を避けるためにも、この発信による新規取引先候補開拓の活動は重要です。

  • 売り込み新規会社の来社

取引のない会社の売り込みは、将来の取引先候補を見つけたり、既存の取引先からは得られないような貴重な情報を得る良い機会です。将来の新規取引先候補になるかもしれません。また、業界の情報、コストダウンのネタ探し、調達リスクの兆候を探るチャンスでもあります。訪問を快く受け、前向きな姿勢で面談にあたるとよいでしょう。

日頃から、新規売り込み会社からの情報収取項目を考えておき、質問リストを作成しておくとよいでしょう。取引のない会社の売り込みは、将来の取引先候補を見つけたり、既存の取引先からは得られないような貴重な情報を得る良い機会です。積極的に会うようにしましょう。

また、取引きの有無にかかわらず突然の訪問もあります。このような場合でも、なるべく時間をとって会うようにすることを推奨します。相手は、突然の訪問でも時間を取って会ってくれたという感謝の気持ちがどこかに生まれるはずです。そのため、普段は話さないようなことも開示してくれるかもしれません。別な言い方をすると、日ごろ聞きにくい質問をする良い機会でもあります。

2.新規調達・購買取引先候補の評価

新規取引先候補をリストアップした次の段階では、候補会社の調査を行います。新規の部品や材料などの見積もり依頼と一緒におこなえば価格の評価もできます。

候補会社の本社や生産拠点等を訪問や視察をし、さらに関係者に聞き取りを行うこと等により、この調査を実施します。当社からは開発購買が単独でインタビューするのではなく、量産購買、開発・設計部門、品質部門、生産部門の人達も参加して、全員が全項目を評価して、最終的に会社としての評価とします。合理的にさまざまな視点から質問することが肝心です。

このような質問をすることにより、その分野の概観を偏りなく考察し評価することができます。評価分野の例としては、「経営」、「品質」、「コストダウン」、「納期」、「開発・設計」そして「財務指標」があります。開発購買として、特に留意すべきは、「経営」と「開発・設計」です。この二つの項目の評価の視点の例は次の通りです。

  • 経営 :

ビジョンと中期経営(事業)計画、成長戦略、当社の業界への理解と取り組み

当社への技術的提言力の可能性ならびに意欲、人材育成

(2)開発・設計 :

市場ニーズをベースにした新規設計開発、開発の独自性、他部門との連携、開発プロセス、等

→2018年7月24日(火)に「開発購買セミナー」を実施しますのでご興味があればご覧ください。

著者プロフィール

西河原勉(にしがはら・つとむ)

調達・購買と経営のコンサルタントで、製造業の経営計画策定支援、コスト削減支援、サービス業の経営計画策定支援、マーケティング展開支援、埼玉県中小企業診断協会正会員の中小企業診断士

総合電機メーカーと自動車部品メーカーで合計26年間、開発購買等さまざまな調達・購買業務を経験

・著作:調達・購買パワーアップ読本(同友館)、資材調達・購買機能の改革(経営ソフトリサーチ社の会員用経営情報)

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