7-(3)-2 調達・購買2.0へ
「寂しい時代」の消費者は何も欲しがっていないことを知りながら、「退屈な時代」の消費者に商品を与え続けるべく、製造業は常に新しいことを「安く・早く」提供することだけを争ってきました。そして、効率化を求めた結果、企業は週休一日が週休二日となり、もう週休三日にも近づいています。効率化の果てには、過剰生産の時代が到来し、それを回避するためには労働者を休ませるしかなかったからです。
その時代におけるバイヤー像とは一体どのようなものでしょうか。それは、「寂しい時代」そして「退屈な時代」の調達・購買の新たな役割を問いかけることに他なりません。そして、その問いは激変のただ中にあって全てのバイヤーに突きつけられている問いでもあるのです。
これから、全世界的に余剰時間が増してきます。「ほしいものが、ほしいわ」と言っても、その「ほしいもの」が分からない時代。そのとき製造業に重要になってくるのは、消費者の「暇をつぶせる商品」を提供することです。寂しく、退屈で、そのくせ何を望んでいるのかということすら分からなくなった私たち。何でもいいので、今の寂しさと退屈さを解消させてくれる商品。それは、非生産的なものかもしれない。不要なものかもしれない。刹那的なものかもしれない。でも、少なくとも、まさに「今」に生きている私たちに必要なもの。私たちが「ほしいもの」はそんな商品なのです。
「暇をつぶせる商品」が求められている、と時代を定義してみれば、多くの商品のヒット要因が分かります。あれもこれも、全ては「寂しい時代」と「退屈な時代」が生み出した必然ではなかったか。
製造業はこの流れに追従することになるでしょう。そして、バイヤーはこの流れにそった製品を調達することになります。それは、効率化という観点や、コストや品質や納期といった常識的な軸を一歩乗り越え、市場という迷路の中から新たな製品を探す営みに果敢に挑戦するということなのです。