4-(4)-2 サプライヤーと報酬制度
・優秀サプライヤーへの感謝
豪華ホテルの一室。そこにはサプライヤー各社の社長たちが集まっています。酒を酌み交わしながら会話をし、名刺交換をして、それぞれの会社の状況を語り合う。すると、司会者から「注目して下さい」の声がかかります。すると、バイヤー企業の役員が壇上に登場し、手短なスピーチが始まる。最後に、聴衆であるその社長たちの中から数名だけを選出して、拍手喝采とともに賞状を手渡す。
これは一体何の集会でしょうか。とある有名電気メーカーの「サプライヤーアワード」の一幕です。「サプライヤーアワード」とは何か?そこでは、毎年一回サプライヤー各社の社長が呼ばれます。そして、その会のクライマックスは、その年に優れた貢献をしてくれたサプライヤーに感謝の意を込めて、賞を授与することです。
この会合が極めて優れていることは、直接社長に手渡すことと、皆が見ている中で授与式が行なわれることでしょう。日々の調達では、ときとして「価格は安くて当然」「納期は守れて当然」「品質は良くて当然」という雰囲気になりがちです。しかし、日本企業から要求されるレベルというのは、世界的に見ても実に高い。それをクリアしながら、さらに他社を凌駕する段階に持っていくということは、考えてみればすごいことです。
「あなたの優位性を評価しているんですよ」というメッセージを賞状に込めて社長へ直々に手渡し、かつそれが同業他社の社長が見ている中でのことであれば、どれだけ好影響が出るかは計り知れません。おそらく、その授与のことを社内に話し、社内報に載り、それが社員全体のバイヤー企業へのモチベーションへとつながっていく。事業戦略だって、バイヤー企業よりのものになるのです。冗談ではありません。
バイヤー企業によっては、役員が個別にサプライヤーを訪問しお礼を述べたり、新聞広告を買い取って優秀サプライヤーを褒め称えたりすることもあります。方法や方式はどんなものでも良いはずです。何よりも、形として、メッセージとして伝えましょう。
それらは全てサプライヤーへのメッセージであり、かつ「私たちは協力してくれるサプライヤーとともに共存共栄し歩んでいく」という社会へ向けたクリーンなメッセージなのです。