6-(2)-2 見積り査定

・見積り査定とはメッセージである

 

とはいえ、そんなに面倒な査定をするべきなのか、と思われた方もおられるかもしれません。「製品なんて分からなくても、サプライヤーに『下げろ』って言えば終わりだよ」と。おそらくこういう人は心底「公平な取引」というものを信じていないのでしょう。ご退場下さい。すみません、言い過ぎました。

私が見積り査定を細かく実施することを勧めるのは、その行為自体がサプライヤーに対するメッセージだからです。自分に届いた見積りは、しっかりと査定する。ミスやごまかしがあれば必ず訂正してもらう。こういうことを繰り返していれば、サプライヤーの営業マンも「この人にはヘンな見積りは出せないな」と思ってくれるはずです。

あるときこういうことがありました。とあるアッセンブリ品を担当しだしたときのことです。新担当と思って舐められたからでしょうか。とあるサプライヤーから「これまで10万円で売っていたものが、どうしても原価が合わずに赤字になっている。14万円に値上げさせてほしい」という見積りを突きつけられました。私が「値上げ申請額が正しいものかどうか確認させてくれ」とお願いしたところ、「分かりました」と言うので、私は徹底的に資料を要求することにしたのです。当初の計画と何が異なったのか、作業時間差異だとすればそれは予定何秒が実際何秒になったのか。作業者の時間レートはいくらだ。工程内不良率はどれくらいで、製品の倉庫保管費用はいくらで計算していて、電気代はいくらで……。実際にタイムウォッチで作業の秒数を測りに行き、段取り時間を確認し、材料の支払額を調べました。朝から夜まで徹底的に。そして、私が「じゃあ、明日は○○と○○を調べて、その後は……」と言いかけたところ、営業マンは「もう……、止めにしましょう。分かりました。値上げは結構です」と諦めてくれました。私はその後に「これは細かく計算したら、10万円どころか8万円くらいですね」と言おうとしていたのですが、それはどうでも良いですね。この件は印象的だったらしく、その後はヘタなことを要求されなくなりました。

これは、社内の関係者に対しても同じです。社内外に価格に関して厳格なところを見せつけること。まさに、見積り査定はメッセージなのです。

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