6-(2)-1 見積り査定

・サプライヤーの見積りは正しいか

様々な見積り査定手法

サプライヤーから届く見積りの正しさを測る尺度としては、次のようなものが挙げられます。①競合比較 ②コストテーブル比較 ③類似品実績比較 ④前回発注比較 ⑤市場流通品比較

これらのうち、まず基本となる①②は次のような表を作成することによって始めます。

また、③④に関しては、発注履歴から類似品や前回発注品を探し、チェックしておきます。

⑤については、新聞(DRAM等)での情報収集や、同業者との情報交換により、自社の購入レベルを適切なものかを確認します。

見積り査定はバイヤー業務のうち最も大事なものの一つです。私は、サプライヤーからの見積もりを測る尺度として ①競合比較 ②コストテーブル比較 ③類似品実績比較 ④前回発注比較 ⑤市場流通品比較 の四つを挙げました。

サプライヤーや社内から「このバイヤーは分かっているな」と思われるためには、三つの能力が備わっている必要があります。

  • 製品仕様を見たら、だいたいどれくらいの価格かを直感的に浮かべることができる
  • サプライヤーから届く見積りの内容を自分で(コストテーブルを使いながら)計算して、適正な値かどうか判断することができる
  • 市場動向・他社動向を把握しており、コストテーブルを超えた価格の判断ができる

それぞれどういうことでしょうか。

まず1。バイヤーはサプライヤーから見積りを受け取ります。その見積り対象となっている製品仕様について、即座におおよその金額が頭に浮かぶかどうかが重要です。見積りを受け取った瞬間に「これは高い」「これは安い」「これは適正だ」と言えるかどうか。コストテーブル云々以前に、経験から予想を立てて、そのセリフが言えるかどうかでだいぶ違うのです。設計者と話しているときだって変わりません。「こういう製品ほしいんだけど」と言われたときに、「それだったら、いくらくらいだよ」と即座に返信できるかどうか。「目利き」で価格レベルを良く知っているバイヤーに勝るものはありません。

次に2。見積りの細かな査定ができることです。直感的に価格は安いと分かった。では、自社の軸(コストテーブル)を使ったときにはどうなのか、類似品や前回発注品と比べても妥当だと言うことができるのか。簡単にコストテーブルを使うといっても、使いこなすためには工程の知識が必要です。また、類似品と比較するといっても、製品仕様が近いのか遠いのかが分からなければいけません。

そして最後に3。コストテーブルや自分の経験を超えた判断力です。例えば、サプライヤーの見積りは200円、コストテーブルで計算すると250円、類似品と比べても遜色ない。しかし、あなたが200円で買っている一方で、他社は150円で調達しているのかもしれません。コストテーブルとは使っている人にとっては絶対軸かもしれませんが、所詮自社の発注履歴の近似曲線にすぎないのです。常に市場動向をチェックし、同業者とも情報交換をしていれば、自社の軸を超えた価格査定ができるでしょう。

もちろん、逆もあります。コストテーブルでは100円もしない製品に、200円という見積りを受け取ることだってあるでしょう。それは、材料高騰ゆえかもしれない。もしかすると、市場需要が過剰で入手自体が困難を極めているのかもしれない。そういうときに、自社のコストテーブルにだけこだわってネチネチ交渉を続けていても、そもそも調達できなくなってしまうのがオチです。製品は調達できなければ意味がありません。コストテーブルを超える値であっても、市場・他社動向から見て妥当と判断できるか。社内を説得できるか。これが問われるのです。

ここまで聞いてもらえれば、最初に挙げた①~④のどれかが絶対的なものではなく、製品や場面によって使い分けたり、複合的に使用したりすべきことが分かっていただけるでしょう。

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