4章-1<ケーススタディ④~社内教育体系が整っておらず、海外展開に支障が出ている>

私は機器設備メーカーに勤めており、調達・購買業務に従業している。自社は、これまで強い技術力と企画力をバックに、右肩上がりの成長を続けてきた。

電機メーカーなどと異なるのは、新興国が攻勢を強めているとはいえ、まだ彼らの技術力が追いついていないことだ。もちろん安穏とはしていられない。ただ、彼らが追いつくまでに、まだ5年から10年は時間がかかるだろうから、いまのうちに体制を盤石にしておきたい。

とはいえ、これまでさほど社内教育などを考えずとも、調達業務が上手くいっていたため、教育の体系などは整備されていない。どちらかというと、OJTを中心として現場中心に考えている。そんなとき、私は現場の調達業務から離れ、「調達・購買教育企画者」として任命を受けた。

現場から離れて、すべての担当者を俯瞰して見てみると、かなりめちゃくちゃな交渉をしているケースもあるし、また個人流のやり方が大半で、組織として正統な調達方法が確立していないようだ。

なるほど、これから自社は海外に工場を展開しようとしており、調達業務のマニュアルなども整備せねばなるまい。いまはどんなやり方が自社で正統とされる調達か、と訊いても誰も答えられない。それに、なにより、「われわれが理想とする調達を実現するために、なにを学べばよいか」といったノウハウ・知識について、誰も整理していない。

まずは日本にいるメンバーに、ちゃんとした教育を施さねばならない。もちろん、教育をしなかったとしても、相当な知識レベルにいる部員もいる。ただ、どんな知識やノウハウを持たねばならないか、全体像を提示してあげることに意味はあるだろう。

その次に、海外で雇用する調達人員へ、いかに教育するかを考えねばならない。さらにその次には、日本では生産量が減っていくので、彼らをどうするか。むしろ、日本の本社にいるメンバーは、教育係として世界中を飛びまわってもらうべきではないか。

マザー工場なる単語がある。これは世界先端の技術を、まず本国で培って、それを全世界に展開するものだ。とすれば、マザー調達本部があっていい。私たちは、世界最強の調達部隊をつくって、そのノウハウを世界の傭兵たちへ伝播させていく。すると、私たちはグローバルに最強の調達部隊を率いるのだ!

……とまあ、理想はなんとなくわかった。

しかし、理想は理想として、果たしてなにから手をつければよいものか……。ここで止まってしまった。

すると上司である部長は「教育体系案はできたか」とか「海外拠点にたいする教育サポート案」を提出せよ、などと矢継ぎ早にいってくる。「わかりました」と、かわし続けているものの、そろそろ着手する必要がある。

ところでどうしたものか……。

無料で最強の調達・購買教材を提供していますのでご覧ください

あわせて読みたい