3章-6-2<セクション5~コラム「公正取引委員会の調査」について>
先日も雑誌「SPA!」から取材を受けました。そのときに「プロの調達担当者は消費税分を転嫁させないようにしているのでしょう」と訊かれたので、「いえ、大半は消費税なんて意識したことすらないはずですよ。もっといえば、消費税の仕組みをわかっているひともほとんどいません」と申しました。どうも記者は「調達担当者=消費税増税ぶんを引き下げさせる=悪」のイメージのようで、取材が成立しませんでした。
が、問題なのは調達担当者が消費税増税ぶんを意識していなかったとしても、結果として値下げ交渉が「消費税分転嫁拒否」とサプライヤに勘違いされることです。つまり、税抜き価格交渉ではあるものの、バイヤー企業が数パーセントの値下げを求めたとき、それが相手には「消費税分転嫁拒否」と映る可能性があるわけです。
とくに注意すべきは「買いたたき」です。次のように定義されています。
「買いたたき」
買いたたきとは、商品若しくは役務(サービス)の対価の額を当該商品若しくは役務(サービス)と同種若しくは類似の商品若しくは役務(サービス)に対し通常支払われる対価に比し低く定めることにより、特定供給事業者による消費税の転嫁を拒むことをいいます。
ここでは<通常支払われる対価に比し低く定める>が問題となります。が、これに絶対基準はありません。肝要は理屈だった値下げ交渉ができているかどうかです。
「減額」
減額とは、商品又は役務(サービス)の対価の額を減じ(ることにより)特定供給事業者による消費税の転嫁を拒むことをいいます。
たとえば3%の値下げ交渉をするときは要注意といえます。繰り返すと、それが消費税増税を意識していなかったとしても、「消費税分転嫁拒否」と映る可能性があります。ここで買い叩きの事例(例示)ですが次のようになっています。すべて曖昧といえば、曖昧です。
「買いたたきの例示」
①対価を一律に一定比率で引き下げて、消費税率引き上げ前の対価に消費税率引上げ分を上乗せした額よりも低い対価を定める場合
②原材料費の低減等の状況の変化がない中で、消費税率引上げ前の対価に消費税率引上げ分を上乗せした額よりも低い対価を定める場合
⑥商品の量目を減らし、対価を消費税率引上げ前のまま据え置いて定めたが、その対価の額が量目を減らしたことによるコスト削減効果を反映した額よりも低い場合
これらが例です。とくに②など、生産性向上を認めないかのような書き方ではあります。また③は日本語として成り立たないのではないか、とすら思います。しかし繰り返すと、値下げ交渉が「消費税分転嫁拒否」とサプライヤに勘違いされることは避けましょう。ならびに、消費税転嫁とは別に、この機会に買い叩きを告発されるケースも避けねばなりません。