2章-2-3<セクション1~概要編『物流の基礎知識』>

・物流業者の産業的意味

ところで、なぜ物流業者が貨物を運ぶのでしょうか。誰もが勝手に運べばいいのではないでしょうか。もちろん、そうはしません。効率が悪すぎるからです。物流業者が運ぶほうが効率よいに決まっています。ただ、その直感を論理化したものが、フェデックスでした。フェデックスの創始者は、物流業者の存在意義を「ハブアンドスポーク」と説明しました。「拠点の空港(ハブ)に荷物を集中させ、各拠点(スポーク)に分散させる方式です」ともいわれます。

これをあえて数的に説明します。たとえば、n人の貨物を送る側と、n人の貨物を受け取る側がいるとします。そうすると、考えうる流通線はn×nとなります。しかしフェデックスが中間にはいり、一手に集荷と配送を行えば、n+nになります。nが1でない限りは(そんなはずはありえませんが)フェデックスが存在したほうがよいことになります。

ご参考までに申し上げるなら、これは調達・購買部門の存在意義にもつながります。社内と社外にそれぞれ、nとnの関係者がいるとしたら中間を司る調達・購買部門がいればよいに決まっていますよね。これも業務効率の観点から説明できるはずです。

としたら、物流業者が増えるほど、国民全体の効率は向上することになります。少なくとも、物流業者が業務しやすい流通整備をするのは国富を増やす手段であるはずです。これは各国で見られるプロパガンダで、物流関係者はそのように利益誘導をしてきました。

たとえば1970年、高度成長のまっただなか、ある提言が行なわれました。早稲田大学の西沢脩教授が「物流は第三の利潤源」説です。当時は、成長率に陰りが見え始め、同時にあらゆる面での非効率性が指摘され始めたころ。西沢先生が書かれた「流通費―知られざる”第三の利潤源」という1970年に刊行された本は、確認できただけでも12版(11回追加で印刷され、配本された)までおこなわれています。この手の本では異例です。当時の日本では、それほど衝撃的だったのでしょう。

ただ、日本はいわゆる“道路後進国”です。首都圏の整備率は47%に過ぎず、ソウルや北京に圧倒的敗北を喫しています。もちろん、道路の質がありますから、勝敗をつけるのはナンセンスではあります。ただし、日本の道路混雑の一因として、未整備率があると覚えておいたほうがよいでしょう。

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