1章-2<セクション1~概要編『寡占のメリット/デメリット』>

・寡占のメリット/デメリット

生産コストの40~70%は外部からの調達コストが占めています。自社はアッセンブリー(組み立て)のみを担い、その他はすべて外部の力に依存するのは珍しくありません。調達・購買とは文字通り、外部から材料・製品・部品・設備・金型……等々を購入する仕事です。

調達・購買の仕事は、その調達品のQCDを維持・向上することによって、自社企業価値アップを目指します。いうまでもなくQCDとは、Q(品質)C(コスト)D(納期)を指します。昨今では、これにD(開発)C(コンプライアンス)M(マネジメント)E(環境)P(営業戦略上ポジション)G(グローバル対応)などを加える例もあります。

調達・購買とは購入する立場ですから一般的に強い立場にいます。しかし、サプライヤ同士の合従連衡や、原材料の値上がり、そして下請けイジメにたいする社会的避難、そしてコンプライアンスの観点からも、サプライヤとの平等・対等な関係が模索されてきました。もちろん、少なからぬ現場では、まだ高圧的な交渉が存在します。ただ、一社では最終生産が成立せず、かつ一社では情報収集に限界があることから、サプライヤとは協調的関係を目指すべきです。

さてこれをかつてはwin-winの関係などといっていました。このwin-winの関係を調達の文脈で単純にいうと、「すぐれたサプライヤにはたくさん発注しましょう。そうすると大量生産によってコストダウンもやりやすいから、両社ともにメリットがある」ものです。もちろん、そうすると選定しやすいのは系列企業でした。一部から揶揄的に表現されるケイレツ発注とは、このwin-winの関係を資本関係の有無を基準とするものです。各社の協力会とはその系列企業、ならびに受注額の大きなサプライヤが中心となったもので、情報だけではなく人的交流を主とするものでした。

協力会の特徴とは「優先」と「情報」と「寡占」にあります。すなわち、バイヤー企業へ優先的に生産・開発をコミットすることで、優先的に情報をもらえ、そしてそれが他企業群と比して寡占的な受注につながるのです。

しかし、特定領域へサプライヤ一社の寡占を許すことは、メリットがあるいっぽうで、デメリットがあることも事実です。特定品目がサプライヤ一社独占の場合、現実的にコストダウンが難しいケースが大半でしょう。したがって、ケーススタディで描かれた内容を、他人事と思えない調達担当者も多いはずです。このような場合の調達担当者のセオリーは、

セオリー①短期的:寡占状態での施策を模索

セオリー②中期的:対抗サプライヤを探す

セオリー③長期的:正しい集中/分散調達を実行する

となります。

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