調達原論3【7回目一戦略の立て方】

7「戦略の立て方」

町工場からはじめる調達戦略 

 

戦略とは、おのれの立場を冷静に見つめ、目指すべき場に効率的に達する仮説のことです。

製品が安価で、自社の戦略にも賛同してくれ、開発力があり、生産体質も完璧。そんなサプライヤーばかりがいれば、バイヤーは苦労しません。

ありがちなのは、一蓮托生してくれるサプライヤーは必要とする技術を有していなかったり、あるいは、開発力も抜群の取引先のコストは高かったりすることです。もしくは、自社が業界下位に甘んじているにもかかわらず、自社の求めるものが、世界トップの企業しか保有していないかもしれません。やや差別的にいえば、町の一工場が、シリコンバレーの超有名企業と癒着関係を構築することは容易ではないはずです。

逆に、すべての製品の取引先と同じような関係を結ぶことも非効率的です。年に一度しか発注しないような製品の取引先と、密接な関係を結ぶ余裕はないでしょう。また、価格さえ安ければ、開発力その他は不問であることもしばしばです。

では、どうすればよいのでしょうか。

それは、製品をマトリクス上に振り分けて、それぞれの領域にあった調達・購買戦略を創り上げていくことです。

①の領域にあたる製品は、注力せずにその都度、価格・納期的に優位な取引先を都度選定する、ある種の諦観が必要です。

②の領域は、取引先同士の徹底的な競合により、品質・コスト・納期・開発の各面に優れたところを選定することです。

そして、戦略的発想が必要な③④領域に関して

③の領域は、まずは、少量の発注・使用から両社の関係構築を第一とし、人的・技術の交流を開始し、サプライヤーにとってのバイヤー企業取引額を高めていきましょう。自社が町工場ならば、商社等を活用しながらコンタクトして、些細なものでもなんとか技術を提供してもらう。そして、その技術を活用した自社製品を多く市場に販売することで、その取引先への発注量も増していき、相手にとっての依存度が高まります。

④の領域は、③を経て辿りつくはずです。相手にとっての自社の重要度と、自社にとっての相手の重要度が一致した場合に、対等な関係=戦略的癒着が必要となるはずです。この領域では、不要な競合をせず、目標価格の合意と、かつ将来の計画を共有したうえで開発・調達を進めていきましょう。

大企業の調達や競合他社の調達だけを見て参考にしても役に立たないことが多いはずです。ある企業で有益なことも、違うある企業では無効です。そして、戦略とは常に古新聞になる宿命を背負っています。それは時期が異なり、状況が異なるだけで使えないものになるからです。

戦略に万能なものはありません。戦略とはおのれを見つめること、そして克己の果てに、自社に最適なものをもがき探しながら、挑戦を続ける一つの営みのことなのですから。

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