調達原論3【6回目一原価計算の方法】
6「原価計算の方法」
サプライヤーのコストを予想してみる
人生は予定を立てても、その通りいきません。思い通りの人生とは何が愉しいのでしょうか。思いがけなかったことが起きるからこそ嬉しい。だからこそ、と強引につなげるのであれば、実際の調達をする前から、サプライヤーから買うコストを予定立てるべきです。
予め積み上げた製品コストを予定価格と呼び、その予定価格に販売数量を掛けたものを標準原価と呼びます。本来は、バイヤー企業内の予定価格を計算する際には、調達・購買部門は、外部調達品と外注品等にしか関わりません。ただ、自社内の予定価格計算を知っていれば、それをサプライヤーの見積りにも適用して計算できるようになるため、概要を説明します。
サプライヤーに適用するとどうなるでしょうか。それは、バイヤーが予め「調達できるはずの見積もりコスト」を予想する、ということです。この作業を通じて、実際に出てきた見積りとの乖離の理由を解き明かすことができます。こちらに何ら材料がなければ、サプライヤーが持ってきた見積りをベースに交渉するしかありません。しかし、事前に計算しておいたコストがあれば、だいぶ話は違います。
昔のバイヤーはちゃんと自分で図面を見てコストを計算できた、と言われたことがあなたにだってあるかもしれません。自分なりの基準を持つことを恐れる必要はありません。間違っていたら、サプライヤーとの対話を経て修正を加えていけばよいだけです。その過程で炯眼を持つバイヤーになるはずです。
なお、バイヤーがサプライヤーの見積りに対して、予定価格を計算するメリットは、次の通りだと考えています。
- バイヤーが基準を持つことにより、成り行きではない価格交渉が実施できる
- サプライヤーに対して、理屈に立脚した交渉を実施するバイヤーと感じさせることで、「ありえない」見積りの提出を防ぎ、長期的にコスト低減が図れる
- 設計部門に対して、予定価格をバイヤーが提示することで、適度な緊張感が保てる
3.については説明をしておきます。これだけは社外的ではなく社内的な効果です。なぜこれまでバイヤーが、社内の製品企画の初期段階で標準原価の積み上げに参画していないかというと、哀しいかな「コストがわかっていない」からでした。
見積りが出てきたあとに、それをベースでお願い交渉を繰り返すだけであれば誰だってできます。会議に呼ぶ必要もありません。だからこそ、バイヤーはこのような計算を通じて、コストを知るプロとして社内に知られるようになるべきなのです。