調達原論【7回目】調達品在庫の功罪

サプライヤを決定したのちに、製品を発注する。トヨタ自動車で有名なJIT(ジャスト・イン・タイム)では、自社生産に同期して納品されるから在庫はない。ただ、実際には他産業でサプライヤにJITを要求するのは難しい。

そこで、在庫保有のメリットとデメリットをあげる。

<メリット>

  • 顧客への納期を確保、工程間の相互干渉減少
  • 材料まとめ買いによるコスト低減

<デメリット>

  • 資金が有効活用されない
  • 破損や劣化等のリスク、在庫管理費用の発生

これまで調達・購買部門は、材料をまとめ買いによるコスト低減効果を喧伝し、在庫に免罪符を与えてきた。しかし、実際には在庫品を調達するために資金が必要であり、見えないコストとして、銀行への利息支払いや株主への配当が生じる。これを資本コストと呼ぶ。正当化議論は、これらを無視している。

企業によってこの率はバラつくが、5%ていどのコスト削減率であれば、1年間在庫にしておくだけで、資本コストのほうが高くなり、意味がない。

かといって、実際には、自社の生産数も変動するため在庫に助けられることも多い。現場の調達部員は在庫をできるだけ減らし、まとめ買い効果を自慢せず、いっぽうで在庫が自社生産を助ける僥倖もあると社内に説得する、そんな「高度な二枚舌」が必要だ。

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