調達原論【5回目】目標価格設定
見積書を依頼するとき、永遠の課題がある。「サプライヤに目標価格を開示すべきか」だ。これまで、開示せよ派と、開示するな派の二派にわかれて議論されてきた。前者は、サプライヤと軌を一にするメリットを語り、後者は、目標価格以下にならない懸念を表現してきた。しかし、これらの議論は意味がない。
時と場合によるからだ。そこで、大きく三つの方式があり、製品や特性によって使い分ければいい。「目標共有方式」「目標非開示方式」「ハイブリッド形式」だ。いわゆるプラスチック、プレス、鋳造・鍛造などの成形品類であれば、「目標共有方式」を使って、厳し目に査定して目標価格を開示するのは一手だろう。しかし、半導体関連製品など、原価計算が事実上、不可能なものは、「目標非開示方式」とすればいい。
また、近年「競争上限値」(あるいは「競合上限値」)といった表現を使う企業がある。これは、目標価格ではなく、その価格以下になることが俎上に乗る条件だと提示する方法だ。つまり、同値が100万円だった場合、100万円以下であれば受注できるわけではなく、それ以下になってやっと他サプライヤと比較してもらえるわけだ。あるいは、状況やサプライヤとの関係性によって使い分ける「ハイブリッド方式」がある。
さらに、公共の分野では「順位配分方式」がある。これは、上位3社に発注し、シェアを7:2:1などとわけ、最終的な受注価格は最安価企業にあわせてもらう方法だ。シェア割はあらかじめ合意してもらわねばならないが、価格と安定調達(取引先分散)を同時に狙えるため、検討する企業が増えている。