5章-15 モチベーションゼロの仕事術

章のはじめで私の就職活動失敗記についてふれた。仕事をはじめてから私は、何か特別な戦略があったわけではない。もちろん、現在からふりかえって、過去の自分を戦略的だったと「偽る」ことはある。ただ、実際にやってきたことは、目の前の仕事に没頭することと、その気の進まない仕事をこなすことだけだった。

よく「願ったとおりの自分になる」というひともいるけれど、周囲の成功者をみていても将来について思い描いたとおりの姿になったひとはすくない。むしろ、理由も根拠もなく、挫折があり紆余曲折があり、思わぬことがおき、気がついたら想定とはまったく違うところに行き着いている。

ただし、だからといって、脱力感にさいなまれることはない、と私は思う。むしろ、だからこそ、偶然の重なりのなかで、その瞬間に集中し、すこしでもその偶然や運命なるものに抗うことで愉悦がもたらされるだろう。ひとびとは、幸せをいつか実現する将来的なことだと考えている。しかし、幸せとは、そのひとが「愉しい」と感じる欠片を寄せ集めた集合体でしかない。その意味では、目の前の仕事に集中し「愉しい」と勘違いすることこそ、将来にわたる幸せの総量もあがっていくだろう。

しかし、今に集中することで、おのずと将来が変わる真実については、あまりの平凡さゆえに語られない。

ただ、いつも真実は、語られない凡庸のなかにあるのである。

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