5章-4 モチベーションゼロの仕事術

3.仕事の作業標準書を作り、仕事の「工場」化を狙おう

仕事の結果やプロセスについて、やる気やモチベーションではなく、技術によるものだと常に思考しよう。仕事の結果がでないとき、「やる気がないからだ」と叱責するひとがいる。だから、世の中には中途半端な自己啓発書にあふれているのだ。そうではなく、仕事の成果がでないときは単に技術不足のことがほとんどだ。

自動車が動くとき、ドライバーにいかにやる気やモチベーションがあったからといって、その自動車の燃費性能を超えることはない。平均燃費20km/lの自動車は、ドライバーによって21~22km/lくらいにはなるだろうが、30km/lになるためには、ハードの増強が必要だ。

ここで私の経験談をお許しいただきたい。私は社会人になってから購買の仕事に就いたといった。購買の仕事とは、生産に必要な部材を買い集めることだ。そこで不思議でたまらなかった。なぜなら、あるバイヤーが交渉したら100円にしかならないものも、違うバイヤーが交渉したら95円になるのだ。これほど不思議なことがあるだろうか。逆もそうだ。ある営業マンが売ると100円にしかならないものも、違う営業マンが売れば110円になる。これほど不思議なことがあるだろうか。いや、私にとっては、そのことが不思議とすら思われず、当たり前だと思われていたことが不思議だった。

先輩たちにどうすれば安く買えるかを訊いてみた。それっぽいことを教えてくれたひとたちは何人もいる。ただ、そのどれもが曖昧で定性的に思えた。どうすれば仕事がうまくいくのか。たしかにKKD(勘・経験・度胸)は必要だろう。「やる気だよ」と教えてくれたひともいた。しかし、それはスローガンであって技術ではない。

やや定量的だったのは、「相手に8割くらい話してもらって、こちらは2割くらい話すのが良い」と教えてくれたひともいた。ただ、それは調べたのだろうか。調べたことはない、という。その8割とは話す時間か、あるいは内容のことか。それもわからないという。交渉術に関する本も読みあさった。たしかにそこには教祖たちの御言が並んでいた。こういう場合にはこう返しなさい。こういう状況のときは、こう質問しなさい。覚えることが多すぎてとても身につかなかった。おそらく交渉ルールなるものを覚えていられるひとは、なにもせずに優秀なひとなのだろう。

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