3章-8 モチベーションゼロの仕事術

その後の上下、そして金ビはどうなったのだろうか。

上は、「仕事なんて成果を出すことにだけ集中していりゃいいんだよ」と偽悪的に演じることで、ひょうひょうとした態度で部下を籠絡していった。下は「結果じゃないんだ、過程こそが大事なんだッ! 夢とやりがいを持って仕事をできるかどうかが重要なんだッ! お前の夢はどこにいった。お前の気持ちを教えてくれ」と部下を詰問し続けた。

上は、「何年後かの大きな夢のために今を犠牲にすんなよ。それよりも、さっさと成果を出して飲みに行こうぜ」といっていた。「プロっていうのはね、仕事の質をやる気によって変えるんじゃなくて、自分の状態がどうであれ安定した質の仕事を重ねるもんだよ」。

下は「仕事の質をあげるためには、ド、ドリームが必要だ」といって、部下のモチベーションをあげる方法を考え続けた。部下のモチベーションをあげるために、課員を集めて「どうやったら課のモチベーションがあがるか」という会議を開いた。結論が出ないとわかると、会社の理念を再読し、「この崇高な理念を達成するために、一週間後に集まろう」といった。課員は無意味な会議に疲れ、あきらかにモチベーションはなくなり、かつモチベーションがなければいけないと聞かされた課員たちは、その会議によって仕事の効率性を落としていった。

下は「仕事にはモチベーションが一番重要だ! 夢や目標を常に心に! 『どうやったら課のモチベーションがあがるか』会議は、なぜ盛りあがらないか検討する会議を実施します」と課員に宣言した。

そのころビは、大久保のキャバクラのマイちゃんをデートに誘い、3回セックスしたあとに結婚を持ちだされ右往左往していた。「夢、夢っていうんだったら、私を幸せにする夢も持っているから、私を抱いたんでしょう」と意味不明なロジックを展開された。ビは、これからは自分のキャリアに夢を抱くのではなく、マイちゃんを幸せにすることが自分の夢だと言い聞かせて、マイちゃんの両親と会うことを決意する。マイちゃんの実家は、九州の佐賀県で定食屋を営んでいるところで、ビが席につくなりマイちゃんの父親は「俺は手持ち資金10万円でこの事業を始めてね。この娘を一人前にすることだけが夢でさ」と熱く語った。夢を語るひとには、常に夢を語るひとがつきまとう。

そのあいだ金は、たんたんと仕事をこなしていた。他のひとたちがやる気やモチベーションに任せて、仕事のムラがあるのにたいして、金の仕事は安定していたこともあったのかもしれない。金に、業界紙の執筆依頼が届いた。「これからの石油業界における調達のありかた」というタイトルでの原稿執筆依頼だった。金はこれまでナンパした女性のネットワークを通じて他会社の情報をかき集め、一つのレポートとしてまとめた。そのレポートは好評になり、それから月刊誌の執筆が増えていった。

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