異常な人生相談にお答えします(イースト菌問題)

御質問:皆様の興味がないかもしれない絞った質問で申し訳ありません。
最近やっと小麦粉や強力粉など安定して供給されるようになりましたが、未だ私の住む地域ではイースト菌を見かけません。もう5ヵ月近く変わらぬ状況で困っています。通常は50gで約280円。ネットで購入すると大量買いになってしまうので避けたいです。なぜなのでしょう?

回答(牧野直哉):
特定の商品について品不足が発生している場合、需要面と供給面の双方から何が起こっているのかについてまず確認します。

まず需要面ですが、一般的に言われていることは新型コロナウイルス流行の影響により、消費者のすごもり消費が拡大し、自宅でパンを焼く人が増加している点が挙げられます。これは家電商品であるパン焼き器についても、価格の上昇や品不足が一時期指摘されておりましたので、自宅でパンを焼く人が増えた=需要が増加したということが1つの原因であると想定されます。

次に供給面ですが、ドライイースト(文脈からそう判断しました)の国内生産量は、国内消費量の0.2%程度であり、供給のほとんどは輸入に頼っています。また国内メーカーにしてもイースト菌=酵母製造業としては成長性が見込めない業種と位置づけられており、今回の新型コロナウイルス流行の影響のように、一時的な需要増加への対応は難しいでしょう。成長性が見込めない業種で利益を確保する場合には、できるだけ現存の設備で生産効率を高め費用負担を最小化し事業を運営しているはずです。国内消費量の0.2%程度を供給するぎりぎりの設備で運営している状況が想定されます。したがって需要の増加にフレキシブルに対応できなかったのが要因の1つであったように想定できます。

またほとんどを輸入に頼っている点も、需要変動の対応を難しくしている要素の1つです。外出できない事態から、自宅でパンを焼く人が増加していることに起因するイースト菌需要増加の構図は、海外でも同様のことが起こっていても不思議ではありません。また一般的に市販されているドライイーストは使用期限が1年から1年半と長く、できるだけ定量の購入+在庫によって国内需要に対応しているはずです。こういった状況も需要の増加に的確に対応できない要因につながると思います。

最後に、需要が増加して供給が増やせない場合、需要と供給の論理から価格が上昇するのはやむを得ないと思います。ある程度ストックが可能な食材なので、価格を優先させるのであれば、 1年半分の需要を想定した購入をおすすめしますし、製品の鮮度やストックさせない考え方を優先させるのであれば、従来対比で高い価格での購入はやむを得ないかなと思います。この状況がいつまで続くかですが、供給構造はこれから改善される見通しはほぼありませんので、需要が減少すれば価格下落につながる可能性はあると思います。

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