3-1.サプライヤ評価 ~あなたのサプライヤになりたい 「新しい購買のサプライヤ選定革命」~
「全然、安くもなんともない!!」
ある設計者はバイヤーに怒鳴り声を上げた。あるプロジェクトの中間報告会の席上でのことだ。その設計者は怒りが止まらないらしかった。「安い」「安い」。バイヤーからそう言われて、採用を決定したある新規ソフトサプライヤのコストが、全然安くなかったのだ。「安くない?」それを聞いて、バイヤーは驚きながら、まずそう返答するのが精一杯だった。
最終的な支払いコストを確認しても、確かに以前のサプライヤのコストに比して優位だったからだ。以前のサプライヤのコストよりも20%ほど安くなっている。これで安くないはずがない。そう思った。「安くないとおっしゃるが、これだけのコスト効果が出ている。なぜ『安くない』と言うのか」と。
その設計者は、ただちにこう返答した。「あそこのサプライヤは、我々が設計するときに質問することすらできない!!1 回の質問に答えるのに1 万円払え、といっている。一日何回か質問したら、それだけで何万円かがパアだ!!質問しないと全く仕事は進まず、しかも、お金を払う予算がないと伝えると、全くこちらのことを気にしようともしない!!」
ここまで聞いてバイヤーは思った。「やはり新しいところを参入させるとろくなことがない。そんな例外はこれまで付き合っているサプライヤならあるはずもなかった。やっぱり新しいチャレンジはやめて、今まで通りにしておけばよかった」、と。窮地に陥って言葉も出ないバイヤーには同情するしかない。このサプライヤの名前については、具体名を書くのは伏せておく。
ただ、外資系で、有名な某アプリケーションソフトを作っている会社だ。ここの会社は、企業に新規採用されるまではとことん営業攻勢をかけてくる。自分たちが作るソフト以外は全く価値がないかのように話してくる。次から次にかかってくる電話。そしてきめこまやかなフォロー。営業マンの姿勢もなかなかすばらしく、世界的に有名なところだから、もちろん技術はしっかりとしている。競合かけたときに最安値のサプライヤではなかったが、現行サプライヤよりも安く、しかも最安値コストとほぼ遜色ないならば、どうしても好感の持てるサプライヤに決定してしまいがちだ。
上記の例もまさにそれだった。「ここは安いし、ソフト品質もなかなか良いらしい」という触れ込みで、数え切れないほどの打合せをしたのちに採用決定した。設計者からはいろいろな意見があったが、コストを抑えないといけないという大義名分に加え、その会社の雰囲気も良かったものだから、購買部の権限としてそのサプライヤに決定した。設計者たちも、「サプライヤのレベルは横並びであり、購買がそこまで言うのであれば」、ということで物事が進んでいった。