2-4.購買分析 ~赤鉛筆購買から黒鉛筆購買へ 「新しい購買の超コスト分析法」~
古臭いコストテーブルを片手に、赤えんぴつを持って見積書を査定して仕事を終わらせようとするバイヤーの時代はもう終わりつつある。そういうバイヤーは批判することだけは得意だ。でも、白紙を見せられて「何か書いてみろ」と言われても何も書けないのだ。まさにこの種のバイヤーを赤えんぴつバイヤーと命名したい。これからは自主的に理論を構築し、確固たるスタイルを築くことのできるバイヤーを時代は求めているのではないか。私は同時にこの種のバイヤーを黒えんぴつバイヤーと命名したい。「赤えんぴつバイヤーから黒えんぴつバイヤーになってみろ!!」そう思った私は、購買変革プロジェクトの施策の一つに入れようと、部長のもとに走った。
「部長、ちょっと聞いてください。コスト分析の提案です。コストの妥当性とかコスト削減のネタ探しのための施策をやりたいんです」
「コスト分析っていうのは今でもできてるだろ。コストテーブルっていうのを各自持っているんだから。それに、コストダウンのネタだって毎期報告会を開催しているじゃないか」
「いや、それじゃダメだから新しい提案をしたいんです」「ダメって、ダメじゃないだろ?」
「ええダメです。今やっていることって全て良くないと思います。コストテーブルといったって、相当古い時代に作られたやつですよ。15 年前とか。全然コストレベルが今とは違うのに、使い続けている。それにコストダウンの報告会っていったって、報告のための報告でしょう。しかもそこで報告されるのも分析のための分析になっている」
「だけど、購買ってところは毎期毎期ちゃんとコストダウンをすることが求められているんだぞ。コストテーブルをむやみに改廃すると・・・」
「別に無理なコストで改定しろとは言っていません。だけど、15 年前っていうのはどう考えても古すぎです。そこにあぐらをかいて日々の業務をやっているだけですよ。それだけを見て、赤えんぴつで査定するってのを繰り返しているだけです」
「だから・・・」
「コストテーブルを残したければ単純なルールを設定すればよいのだと思います。例えば、コストテーブルよりも5%安く買えているのだったら、コストテーブルを改廃する。そして部員は、コストテーブル以下で購入することを評価されるのと同時に、コストテーブルの改廃自体を評価される」
「なるほど・・・」
「コストテーブルを変えること自体が、そのコストテーブル以下で購入することよりも評価される。そういうことができれば、次に部員は自主的に『どうやったらコストがより下がるか』ということを自発的に考えるようになるのだと思います。今では、部員は全然自発的には・・」
「分かった。自発的にネタを探していないということだろ?だけど、コストダウンの報告会では、ちゃんと皆やってるだろ?ああいう活動を通して会社の業績に寄与しているっていうことも事業部長からは評価してもらっている」
「どうでしょうか?今の会社の業績の良さは円安だけが要因だっていう見方もあります。だって会社全体の資材比率なんて全然過去から変わっていないじゃないですか。あの報告会で言われていることも、どれだけが購買発のことなのか分かりませんよ。それに、本当にあれだけの効果が上がっているかが疑問なところがある」