0-1.はじめに ~ある中堅バイヤーの挑戦 「お前が世界一の購買部を作ってみろ」 ~

私もあなたと同様、ちょっと前までは、「購買がプロジェクトX の舞台になんてなるはずない」と思いながら仕事をしていた。はじめに「あなたらしい生き方、してみませんか」そのチラシは、私がサプライヤに出張に行く途中の電車に貼られていた。黒いスーツで短髪の若い男性と灰色のジャケットを着た茶髪の女性がお互いを見ながら笑っている。

 

転職会社のチラシだった。私はいつもの通り無茶な納期要求をサプライヤに交渉しに行く途中だった。こちらの発注遅れと知りながら、通常は3カ月かかる半導体を約1ヶ月半ほどで手に入れなければいけなかった。どこまで遅らせることができるかという工程表と相手先の地図を握り締めていた。「またかよ・・・」。そんな憂鬱な気分の時、私は吸いこまれるように、そのチラシに見入ってしまったのだ。

 

「あなたらしい生き方、してみませんか」考えてみれば、会社に入ってから15 年間ほど自分らしい働き方などしたことがあっただろうか。いつの間にか37 歳にまでなっている自分がいた。私は大学の経済学部を卒業し、中堅の電機メーカーに就職した。しょっぱな、配属先として言い渡されたのは、「購買部」というところだった。私は、できれば人事部か総務部、「ま、経理部でも仕方がない」と思ってたところだった。そんな中で、購買部という訳の分からないところに配属された日のことを昨日のように思い出すことができる。

 

配属されてすぐ、訳が分からないまま納期フォローの電話をかけさせられたこと。訳が分からないままメーカーの見積書の山の前で、一つ一つ査定していったこと。なにもかもが分からないままだった。そして、いつも設計者の言いなりになってしまい、発注品の納期が遅れるといつも購買部の責任とされ、日々翻弄している先輩の姿を多く見てきた。「そういうふうにはならないぞ」と思いながらも、年月を重ねる自分がいた。

 

入社数年経ったとき、深夜遅くまで不良品の原因と戦っていると、「自分と同期入社の××くんが、公認会計士の試験に受かったぞ」というニュースが聞こえてきた時には焦った。なんだか遥か遠くに彼がいるようで、焦ってしまった。彼はそのように立派なキャリアを積もうとしているのに、自分にはなぜそれができないのだろう。なぜ自分だけがこのような無意味な仕事に囲まれて日々過ごしているのだろうか。

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