8-4    生産能力減少傾向の中で実現するサプライヤー能力確保

国内製造業の生産能力は長期低落傾向が続いています。倒産発生件数は低く抑えられているものの、経営者の意志で事業継続を諦める休廃業・解散の発生は高い水準で推移。こういった企業数の減少を示す統計は、発注すべきサプライヤー減少する可能性と認識し対処します。

☆サプライヤーの対応力減退

サプライヤーの生産能力減退に加え、働き方改革による残業時間の削減圧力は、サプライヤー対応力の減退要因です。とくに生産数量変動への対応力に大きな影響をおよぼします。

調達購買部門は自社の在庫リスクを減らすため、需要が確実になって発注する傾向を強めています。その結果、調達に要するリードタイムギリギリになって、ときにはリードタイムも確保できないタイミングで発注し、結果的にすべての案件が短納期案件化するのです。

こういった生産現場に生産変動、とくに増産対応する余地はありません。従来生産変動への初期対応は、残業によって行われていました。しかし今や、残業時間も思うように増やせません。バイヤーは従来以上に、サプライヤーの他の顧客=競合企業と能力獲得競争の中にあると意識しなければなりません。

☆サプライヤーを選別せよ

こういった事態への対処は、サプライヤーの対応優先順位を上げる取り組みが有効です。発注内容の早期確定や、リードタイム確保、発注を集中してサプライヤーからみた顧客としての価値を上昇させます。

バイヤーは、こういった取り組みを実行するサプライヤーに集中購買を推進します。実現には調達購買部門だけではなく、社内関連部門の協力が欠かせません。サプライヤーの優先順位設定による効果を生むためには、サプライヤーに依頼する自社の対応も優先して行います。

☆調達購買部門に求められる社内発信

企業の休廃業・解散の増加は、社長の平均年齢の上昇からも読み取れます。大手信用調査会社の調査結果によると、2018年調査で60歳前後、年々上昇しています。こういった傾向は会社数の減少に拍車をかけ、調達購買部門にはサプライヤー数の減少として影響を及ぼす可能性が高まっているのです。

調達購買部門では、サプライヤーの経営者年齢や、後継者の存在を確認し、懸念される場合は、発注先変更を検討します。発注先の変更には、社内関連部門へ状況を説明し、サプライヤーが受注しやすいQCDの設定に協力を要請しましょう。「受注しやすいQCDの設定」は、サプライヤー開拓を容易にするだけではなく、発注後にコストダウンを推し進める場合にもコストダウンの成否を左右する重要な要素です。調達購買部門の業務推進だけではなく、受注しやすいQCDの設定が、全社の業績に貢献できる取り組みであることを社内関連部門に対してアピールし理解を得ましょう。(牧野直哉)

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