6-8コストテーブルからの逸脱を見逃すな ~コストテーブルの限界

コストテーブルは調達購買業務でいろいろな活用方法がある一方、弱点も抱えています。弱点を理解して活用し成果を生み出すツールにします。

☆過去の実績であること

コストテーブルは基本的に購入実績から作成します。しかしその活用は、購入したり購買戦略をつくったり意思決定の場面です。実績が将来も同じかどうかは誰にもわかりません。企業努力によるイノベーションによって価格下落を引き起こした事実から、コストテーブルを購入価格の絶対的指標として信じるのは危険です。イノベーションに代表される変化と、変化によるコスト変動には目を光らせます。価格上昇する場合はサプライヤーが言ってきます。しかし価格下落による変化はバイヤーが感じ取る必要があるのです。

購入価格の査定を容易にするコストテーブル作成の意義は確実に存在します。ただ活用場面で盲目的になるのでなく、わずかな変化にも反応する姿勢が欠かせません。妄信的な活用を続ければ、コストテーブルの健全性は保てないのです。

☆変動要因をどのように反映させるか

購入品コストは、市場価格影響を受ける構成要素が含まれている場合があります。特定の原材料を多く使用している場合、コストテーブルを活用して市場価格変動が全体コストに与える影響を試算します。仮に10%を占める構成要素の市場価格が10%変動した場合、購入価格への影響は1%です。変化もがおよぼす影響を試算できるコストテーブルを作成すると、材料価格が大きく変動する局面でも、適切な価格見極めが可能です。

☆コストテーブル否定を恐れない

長期間取引を継続しているサプライヤーのコストテーブルは、新しいサプライヤーから購入開始の瞬間に否定される場合があります。企業間取引(BtoB)はバイヤー企業とサプライヤーごとに価格決定が行われるためです。コストテーブルより安い価格で購入できる場合も、逆にコストテーブルよりも全般的に高くなってしまう場合も、対応には苦慮します。安くなる場合、購入実績に問題があったと言えます。高くなる場合、社内説明に苦慮しますね。しかしそのような事態は、必ず起こるのです。優秀なバイヤーも世の中に存在する購入可能なサプライヤーすべてを考慮した発注先選定などできません。過去から供給してきたサプライヤーが、将来にわたって同一条件で供給継続する保証もありません。大きな変動によってコストテーブルを修正する事態になったら迷わず、躊躇なく最新データで再作成します。(牧野直哉)

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