5-10サプライヤーマネジメントの基礎 ~良好な関係の継続方法
バイヤー企業とサプライヤーの意向が合致した場合、良好な関係が構築できる基礎的な条件が整いました。バイヤー企業にとって良好な関係を継続させる方法を学びます。
☆小さな信頼の積み重ね
企業間関係も人間と同じように小さな信頼の積み重ねでしか構築できません。双方の意向が確認されたら上位者同士の引き合わせも重要です。しかしバイヤーと営業パーソンとの間、また双方の関係する担当者同士の良好な関係が重要です。
企業間売買は、QCD(品質の向上:Quality、低コストの実現:Cost performance、必要な時期に届ける:Delivery Date)を始め、さまざまな約束の積み重ねによって契約が締結されます。契約事項以外も売買に関わる日々のやり取りで、さまざまな約束が交わされます。良好な関係構築の第一歩は、そういった約束一つひとつの順守です。ときには守れない事態も想定されます。そんなときこそ事前に守れない事実を伝え、打開策を合わせて提示できるかどうかで、信頼関係が構築できるかどうか決まります。
☆良好な関係で、何を実現するか
良好な関係とは、両社の安定した関係ではありません。安定させるべきは、品質であり納期でありコストです。サプライヤーとは良好な関係を構築しなければなりません。しかしサプライヤーと良好な関係の構築と維持が、バイヤー企業にとって最終目的ではありません。良好な関係を利用しQCDの維持と向上を行い自社の事業への貢献を実現します。
調達購買部門とサプライヤーの良好な関係は、仲の良い心地良い人間関係ではありません。ときには厳しい言葉の応酬を覚悟しつつ、双方のメリットの最大化を実現する目的を共有し、ともに行動する関係なのです。
☆バイヤー企業とサプライヤーの関係に不可欠なもの
両社の関係が双方にとって有効であり続けるためには、適度な緊張感と一定の不安定さが必要です。両社の関係を心地よい状態にしてしまうと、その関係を守ろうとする動きが起こります。両社の関係の「安住化」を表す典型です。
バイヤー企業が求めるQCDの安定をどのように実現するか。些細な変化も見逃さないバイヤーの注意力です。なんらかの変化の兆候を察知したら、原因の明確化と安定回復までのスケジュールを設定し、フォローを行います。「常にチェックしているぞ」。そう思わせて適度な緊張感を両社の間に作り出すのです。
またサプライヤーと良好な関係の結果、社内の誰もが疑いなく最適だと判断するサプライヤーが現れるかもしれません。そんなとき調達購買部門は新たなサプライヤー候補にあえて発注し、少しだけ不安定な要素をつくるのもバイヤーの重要な役割です。(牧野直哉)