4.行かずにすませる海外調達実践法

かつて外国為替が円高へ推移すると、海外調達の実現が盛んに叫ばれました。ただでさえ安価な人件費によって魅力的な見積金額が、円高によって輝きを増すのです。調達購買部門には、海外サプライヤーからの調達額増加を狙った専門組織が設置され、各社こぞって海外調達に取り組んでいました。

しかし近年、外国為替レートが安定しているせいでしょうか、海外調達の拡大を叫ぶ声が明らかに下がっています。いくつか理由があります。

一つ目は、日本企業による海外直接投資です。日本から行う海外調達から現地法人から行う現地調達へシフトしています。現地法人は現地の調達拠点として活用可能です。現地で調達実現するリソースを確保したのが、海外調達が騒がれなくなった理由です。

二つ目は、海外調達活動が定着し通常の調達活動化した点です。為替が変動したから行うのではなく、企業の休廃業増加の受け皿として海外サプライヤーを採用したり、海外調達先のサプライヤーの技術や品質水準が向上したりして、従来よりも少ない負荷で海外調達できる環境が整った点も挙げられます。そして二つ目の理由は、インターネットを活用した新たなコミュニケーション手段の登場も大きな要因です。

従来の海外調達は、発注後も高い頻度でフォローしないと納期が遅延し、品質レベルが維持できない問題が発生していました。解決には高い頻度の海外サプライヤー訪問しかありません。しかしスマートフォンの登場が状況を一変させます。

今やまったく海外に行かない海外調達も可能です。インターネット環境があれば毎日短時間で海外サプライヤーへフォローが可能になりました。スマートフォンの性能向上は、日々の進捗確認を文字や写真だけではなく動画で可能にしました。製作状況を目視で確認し問題が小さなうちに解決して納期と品質を確保しているのです。リアルタイムのコミュニケーション実現は、海外調達のフォロー方法に大きな変革をもたらしたのです。(牧野直哉)

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