1.調達購買とは/実務担当者の役割
1-1調達購買のはたらきとは?
調達購買部門は、社内にない資源(リソース)を、社外から確保(購入)する役割を担っています。しかし、同じ「購入」でも、個人の「購入」と企業の「購入」ではプロセスや意志決定方法が異なり、一定のルールが存在します。
- 企業の「購入」に必要な意志決定は部門ごとに分担して行われる
個人では自分の意志で買うものを決め、購入代金を支払い「購入」します。一方企業で行われる「購入」は、必要な意思決定を「購入」実現まで、いくつかの部門で分担して行います。
企業で妥当性を担保する「購入」の実現には、次の役割分担が必要です。
- 買うものを決める(購入仕様、スペックの決定)
- 購入するかどうか・購入数量を決める
- 購入先(サプライヤー)と購入条件(価格、支払方法、納期など)を決める
以上3つの役割による意志決定が行われて、初めて企業としての「購入」が実現します。調達購買部門は③を担当します。①は製造業では設計・技術部門が中心で、社内のあらゆる部門が担当します。②は主に生産計画部門が担当します。
- 調達購買部門は、購入品の確保と、QCD妥当性の確保が任務
調達購買部門は、購入対象のQ:品質、C:コスト、D:納期の3点の要求内容を実現します。発注先であるサプライヤーに要求した品質通り、適切な価格で、納期順守した購入を実現します。
調達購買部門は、社外サプライヤーへの対応が主な業務です。しかし「購入」実現までには、社内の様々な部門が役割を分担しています。「購入」の一連のプロセスが円滑に進むためには、サプライヤーと購入を要求した社内各部門との「調整役」としての役割も重要です。
- 調達購買部門が直面している問題
調達購買部門は、社内で購入が決定されたら「購入しない」という選択をもちません。社内より提示された要求内容に沿ったQCDを確保し購入を実現します。従来の調達購買部門における基本的な業務に加え、近年では大きな環境変化へ対応を強いられています。大きな変化の例として、次の3つの事象が挙げられます。
- グローバリゼーションによる経済構造の変化
- 新たな技術の登場(IoT、AI、ブロックチェーン)
- 持続可能な社会への貢献(SDGs、CSR、持続可能な調達)
これら環境変化は、調達購買部門の業務にも影響を与えています。人口減少に伴う人手不足は、労働者だけではなく経営者にもおよび、自らの意志で企業経営を断念する企業の「休廃業」数は、近年高い割合で推移し調達購買部門にはサプライヤー数減少の影響があります。また新技術の登場は、調達購買業務を効率化し、ブロックチェーンはトレーサビリティ確保に大きく貢献すると目されています。持続可能な社会への貢献は、どんな企業も取り組むべき課題です。
従来の「購入」でも国内サプライヤーのみならず、海外サプライヤーを含めた対応の必要性が増しています。海外進出した企業では、調達購買業務に関し海外工場や子会社への指導・教育も重要な任務です。調達購買部門の業務内容が、「購入」だけではなく多様化、複雑化しています。調達購買部門には、様々な大きな変化に対応しつつ、同時にコストダウンも実現させなければならない難しさがあります。新たな課題の到来にも、対応し続ける調達購買部門を目指すべきなのです。(牧野直哉)