オールビジネスニッポン書き起こし「制約と自由」

*FMラジオ番組「坂口孝則と牧野直哉のオールビジネスニッポン」書き起こしです。よかったら、PODCASTをご登録お願いします! ここからどうぞ

坂口:今回のテーマは「制約と自由」です。なんかちょっと堅苦しいテーマなんですけれど、今ね、牧野さんと話したみたいに、コロナウィルス、コロナ禍というものにおいて、色んな事業だとか、企業活動で、制約が掛かってると思うんですね。

牧野:そうですね。

坂口:その制約というのは、もちろん悲しむべき対象ではあると思うんですが、この制約だからこそ、生まれてきた表現っていうのもあると思うんですね。

牧野:なるほど。

坂口:例えば文学作品で言うと、ペストが流行った後に、ルネサンスというのが始まりましたし、あとペストで大学が休みだった時に、その学生だったニュートンは万有引力の法則を見つけたっていう、歴史的な事実があるんですね。

牧野:なるほどね。

坂口:僕が思い出すのが、これまたちょっと音楽好きな僕からすると、福岡のバンドでシーナ&ロケッツっていうバンドがあるんですね、鮎川誠さんがやってた。シーナ&ロケッツがあるライブに出たらしいですけれど、シーナ&ロケッツだけじゃなくて、色んなアーティストがやってたんで、シーナ&ロケッツがやる前に、騒音があまりにも激しすぎるって言って周囲から苦情が来たことがあったらしいですよね。

牧野:ほーーー。

坂口:その時に、そのイベントの主催者は、こともあろうかね、シーナ&ロケッツに一曲だけで終わってくださいと、言ったらしいんですね。

牧野:なるほど。

坂口:これはあまりの苦情が来すぎているからって、鮎川誠さんは、「分かりました」って言って何をやったかっていうと、ローリングストーンズの『サティスファクション』って曲があるんですね、その曲を、何と45分演奏し続けたんです。

牧野:ハッハッハッハッ。

坂口:これすごいなと。制約の中で演奏したやつが、むしろ自分たちのPRに使うっていうのが、すげえなと思ったんですね。話を戻ること僕が大学生の時なんですけど、あの当時、僕はアングラ演劇っていうのが大好きだったもんですから、だから色々演劇を見に行ってたんですよ。そしたら何かもうちょっと自由の意味をはき違えてる大学生の演劇とかを見ると、凄くて、観客の中に、演劇人が紛れ込んでいて、あとでそいつらが舞台に上がってハプニング起こすだとか、あるいは演劇人が何か突然観客に殴り掛かってくるだとか……。あるいは、もうメチャクチャ面白い例で言うと、チケットを買いに来た人を、そのまま拉致して遠くまで連れて行くとか、ということが起きていたんですけど……。僕が行って思ったのは、それって面白くはあるけど、自由で何でもできる場合って、大抵くだらないことしか生まれないんだなって思ってね。

これちょっと、牧野さんに聞いてみたいですけど、原稿を書く時に一番困るのって、何でもいいです、って言われた時じゃないですか?

牧野:おっしゃるとです。困りますよね。

坂口:困るんですけどね、じゃあ僕が経済ネタを書くと思ったのか、「RCサクセションについて書いていいですか?」って言うと、駄目っていうわけですよ。

牧野:なるほど、なるほど。

坂口:そういったある程度の制約を作ってくれた方がなんか書きやすかったりしますよね。これまでの表現の歴史とかを見てみると、意外に制約があるからこそ新しいものが生まれたりしてきているので、家にいないといけないとかいった状態を作って、それが何か新しい創作活動っていうか、企業活動に繋げられないかなって考えた方が、僕は建設的なんじゃないかなと思うんですけど。

牧野:なるほど、なるほど。私も色んな創作活動で原稿を書いたりする時に、いつも直面するのは、何かわざとね、制約を作ったりするんですよね。まあ、あるあるだと思うんですけれども、紙とペンがない時に限って、何か残したいものがあるとか、そういったことがあったりとかですね。あとやっぱり、本来であればリラックスして、机もあって、例えばパソコンもあってっていう時の方が、本当はアイデアも膨らむはずなんだけど、でも歩いてたりとか、私の中であるあるなのはね、電車の中で色んなことを思いつくんですよ。

坂口:よく移動の速度と発想っていうのは比例関係にあるっていう人いますからね。飛行機の中の方が、新幹線の中の方が、発想が思い浮かぶ、けどメモがない、みたいな。

牧野:それがだからどうやって残すかっていうのは、最近であればね、例えばスマホにこう録音機能があったりとか、そういったことがあるので、あとはそのポケットにメモ入れてればいいだけなんですけれども、何かやっぱり私自身も今言ったのは物理的な制約なんですけれども、制約っていうのは精神的な面と物理的面なので双方である程度あった方がいいんじゃないかなと、私も思ってますね。

坂口:昨年なんですけど、イスラエルの投資家と話してましたら、制約万歳みたいなこと言ってるんですね。どういう意味かというと、イスラエル人っていうのは徴兵制度があって、二年間軍隊に入らなければいけないと。その投資家もコンピューターサイエンスをこう専攻していた人だったんですが、二年間徴兵制で軍隊に入ったと。その時に、IT戦略室みたいなところに入れられたらしくて、その鬼軍曹から囲まれて、入隊してすぐさま課せられたミッションが、半年以内にイランのサーバーにハッキングしてミサイルを止めろ、って言われたらしいですよ。この制約がゆえにめちゃくちゃ勉強したし、めちゃくちゃ色んなことを学習したって話をしていたので、意外にちょっと繰り返しになりますが、制約というのは、その人を飛躍させるチャンスでもあるんだなっていうような気がしましたね、はい。

ということで、今回のテーマは「制約と自由」でした。

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