調達スーパーサイヤ人なる方法
世の中は「情報」と「流通」しか変わらない。これが、私の至った
つまり、「情報革命」と「流通革命」しかありません。人間はほと
しません。それはシェイクスピアやゲーテ、夏目漱石、論語でもな
人間のありようが読み続けられている事実からもわかります。情と
な時代もほとんど同じなのですね。
情報はどうか。携帯電話で日本からメールを送れば、瞬時に地球の
ジルに届く--などといった事実にもう驚きもしません。ただ、9
には考えられませんでした。いまでは、スマホさえあれば、世界中
アクセスでき、サプライヤも製品もいくらでも検索できます。情報
とで儲けていた業者も、いまでは価値を持ちません。
流通はどうでしょうか? かつて書店で書籍を注文すれば1週間はかかりま
した。地方では2、3週間かかることもザラでした。しかし、いま
ゾンから1日で届きます。国をまたいでも数日で届きます。国際宅
くほど進化してきました。移動の利便性向上は、各国民にほんとう
与えています。将来、日本からヨーロッパは数時間でつながるはず
ときには、想像もつかない世界が待っているはずです。
その情報と流通があらたな製造業を創りあげようとしています。た
ーカルモーターズは、図面をオープン化し、世界中から叡智をつの
す。仕様を公開することで、それをどう改善すべきか、なんと無数
取り入れるシステムです。ここには自社の設計者とか、サプライヤ
とか、あるいは一般の趣味人などの垣根はありません。グッドアイ
出したひとは、ひとしく報われます。設計だけではなく、部品調達
もあります。既存大手メーカーのサプライチェーンを活用し、水平
限まで推し進め、「グローバル、クイック、フラット」なモノづく
しています。
GMはシボレー開発に6年と65億ドルを費やしました。テスラの
ーはおなじく6年で、費用は2億5000ドルでした。それにたい
ーカルモーターズのラリーファイターは18ヶ月と300万ドルで
すごさ! コスト削減などというレベルではありません。起きているのは、
企業革新というべきレベルです。情報と流通を革新できる企業は、
どの成果をもって市場に台頭しようとしています。
これまでサプライヤを知っていることと、サプライヤを探してくる
調達・購買担当者の役割でした。しかし、「グローバル、クイック
ト」なモノづくりにおいては、仕様を公開することで、サプライヤ
集まってきます。調達・購買担当者が探す必要はなく、サプライヤ
業を見つけるわけです。
そのとき、調達・購買担当者の仕事は残っているでしょうか。ほと
とはいいませんけれど、これこそが調達・購買部門の考えるべき課
私は思います。すなわち、グローバル化と情報革命・流通革命が起
利便性ゆえに調達・購買の仕事がなくなってしまう悪夢。もちろん
企業にとっては悪夢ではなく、効率化なのでしょう。ただ、サプラ
社のマッチングがあまりに機械的に完結してしまったら、私たちは
加価値をあげるべきでしょうか。
もう一つの潮流は、製造業のEMS化です。これからは自社生産分
んEMSに出せばいい。この流れは止まりません。このEMS化と
も、自社生産のために部材を買い集める調達・購買機能の重要度低
しているひとはほとんどいません。おなじく、EMS化が進んだと
たちはどんな付加価値をあげるべきでしょうか。
「調達スーパーサイヤ人なる方法」とタイトルにつけました。これ
回答はないものの、まずは「情報」と「流通」の動きに敏感になる
して、新たな付加価値について考えることと私は思います。
(坂口孝則)