サプライヤの不良品はハンマーで壊すべきだ

グローバルに展開する企業が直面するのは、「なんだかんだいっても、海外製品の品質は悪い」というリアルです。この問題から脱却できた、と胸を張る企業をほとんど見たことがありません。

しかし、かつて悪しき品質の代表格ともいわれた中国メーカーはどうなのでしょうか。日本メーカーの指導なくとも、じゅうぶんに高品質の商品を作っているとはいえないでしょうか。私はハイアールのエピソードを興味深く聞きました。同社はもともと青島(チンタオ)で冷蔵庫メーカーとして誕生しました。彼らは現在、世界的にトップメーカーになっているのですが、「サプライチェーンがもっとも大切だ」と述べています。さらに「サプライチェーンにおける品質が何よりも重要だ」とも。

同社には張瑞敏さんという方がいました。このひとはかなり型破りなひとだったようです。製造ラインから冷蔵庫が出来上がってきたとき、そのなかに不良品があると発見しました。具体的には80年代の某日では一日に76台もの不良品が生じたようです。張さんは、ハンマーを持ってきて、不良品を自ら叩き壊したようです。

怖すぎます。そして、工場作業者を前に、いまは76台だけれども、次は7600台を壊すことになるかもしれない、とすごんだそうです。そして他社が生産の増強を打ち出すいっぽうで、同社はひたすら品質の向上を目指しました。そして、他社は品質の不具合を頻発させたのですが、同社は高い品質を達成しました。

ハイアールは日本の製造業が得意とする「すりあわせの技術」を中国サプライヤと開始しました。しかも、これが面白いのは、垂直統合でもなく、水平分業でもなく、その中間のものです。説明は不要でしょうが、前者は、中長期関係を前提としてサプライヤとともにカスタマイズしていくものです。それにたいして後者は、製品をモジュール化したうえで、それに適するサプライヤを探してくるものです。

何が中間かというと、ハイアールは、モジュール化をサプライヤとの「すりあわせの技術」によって成し遂げたのですね。冷蔵庫は、5つのメインシステムと23のサブシステムで設計することで商品開発のスピードをあげていきました。と同時に、モジュール技術を有すサプライヤそのものを、ハイアールは率先して「創出」していきました。つまり、サプライヤ育成です。自社としかビジネスができないサプライヤを育てるのではなく、モジュール技術を有するサプライヤを育てるという発想。これはいまの日産自動車さんの考え方とも近いかもしれませんね。

これは、もちろんモジュール技術をもつサプライヤがいなかったため、苦肉の策かもしれません。ただ、サプライヤが自律して先進技術を摂取できるようになれば、それを優先的に自社に振り向けていく、といった仕組みは「うまいな」と思います。

ここでやや話が脱線しますが、私見を述べます。伝統的なる日本企業は、垂直統合をとります。それはサプライヤへの愛があったからだろう、と私は思います。だって、愛がなければ、サプライヤを自社文化にあうように二人三脚で歩むなどできませんよ。ただ、愛に育まれて、誰かの愛にのみ生き、そして愛する対象と歩み続けたひとは、その愛を提供してくれるひとがいなくなった瞬間に立ち上がることができないほど足腰の弱い存在になります。おそらくここに愛の本質的な残酷さがあるのですね。

え、なんの比喩かって? それは考えていただければ幸いです。

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