開発購買を成功させるたった一つの冴えたやり方

人は誰だって「手ごたえ」のために仕事にあたります。

自分の発意を次の業務に活かし、果てなき発展を目指し、その過程で周囲から感謝されること。そして、予想以上にコストが下がること。「手ごたえ」があること――。誰かが決めた仕様を前提として、その指示通りに製品を調達するだけではつまらない。調達する製品に、自分を投影できなければ、それはバイヤーではありません。

開発購買とは、製品の企画・開発の初期段階から調達・購買部門が参入し、最適な仕様や買い方を提示することで、コストを含めた全体最適を図ろうとするものです。図で示すとおり、製品のコストは企画・開発時点で8割は決定してしまうといいますから、そういった上流に介入することでこれまで以上の安価な製品を選定できるようにします。

一つ注意していただくことがあります。「開発購買」というと、どこかそのような新しい種類の手法があるのかと勘違いしがちですが、これはバイヤーの日々の業務そのものということです。

難しく考えることはありません。これまで製品の調達を繰り返すときに得たことをメモしておき、それを次開発に反映させるだけです。バイヤーならば、ほとんどの人が知っているとおり、コストを下げることなど簡単だといえます。バイヤーのもとには、「もうちょっと仕様を変えてもらえば、価格は下がります」だとか「これだけの数量をまとめてもらえれば、3割は下がります」という種類のサプライヤー情報が蓄積されているはずです。それを寝かしたままではもったいない。そのメモは、個人の気づきに留まることなく、社内に発信することで、新たな調達品のコスト低減のために使われるべきものです。

シリコンバレーでは、起業家たちが、雑談のなかでグラスのコースターの裏に書いたアイディアをきっかけとして大きな事業に成長させた例がいくつもあります。同じように、そのメモは大きなコスト低減となってあなたとあなたの事業に戻ってくるはずです。些細な思いつきや情報をメモしておくことは、備忘録としてだけではなく実益をもたらします。私が発表した調達・購買のDVD( http://www.future-procurement.com/DVD/dvd.html )も、些細なメモの積み重ねが講義になっています。このDVDを多くの方々がお買い求めいただいていることは私にとって誇りです。

簡単です。いますぐ設計者の元に走りましょう。そして社内会議など機会あるごとに、自分が蓄えたネタについて語りましょう。躊躇せず。

これまで培った経験を次の調達に活かす、多くの人と対話を繰り返すことで見えてきた将来の製品像をいち早く自社の開発に活かす、ということは、新たに始める種類のものではなく、むしろ当然のことを再認識する行為に近いでしょう。この言葉が生まれてきたこと自体、逆説的にバイヤーが期待されている役割を果たしておらず、設計者側がそのような単語を使用しないのは、設計者からすればそのような行為は至極当然の業務遂行プロセスともいえるのです。

これからのビジネスマンには創造性が求められる、とよく言われます。それはバイヤーだって例外ではないでしょう。しかし、バイヤーという仕事を進めると、社内から提示される無数の制約にがんじがらめになってしまいます。「この仕様は譲れない」「こういったサプライヤーしか開発はできない」「多少高くっても、このサプライヤーにしてほしい」。だから、多くのバイヤーが自虐的に調達・購買業務について、「末端の伝票処理役」という諦観を抱くにいたります。

ただ、本当にそうか、と私は思うのです。どんな仕事だって、制約や桎梏はあります。それに、制約があるなかから自分の方法論を見つけ、業務に反映していくことこそ本当の創造性なのです。だからこそ、バイヤーは面白い。そして、調達・購買業務とは、そのようなしがらみのなかで、高貴な生のあり方を探し続ける、終わりなき旅のことです。

開発購買とは、日々の業務を通じて、バイヤーの経験と先見性を投影すること。そして、これまで以上の製品を創り上げようという意思と情熱を反映させることです。開発購買のテクニカルな側面だけを強調する人がいます。しかし、私が開発購買に託した夢は、そんなことなのです。

開発購買のための新たな組織もプロジェクトも必要ありません。あなたが明日からすぐに、いや今日からだって、まさに今からだって、始められるのです。そのような熱意のある方々へ私も支援を続けたいと思い、教材の販売を開始しています( http://www.future-procurement.com/product/ )。どうぞ、よろしくお願いします。

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