調達部門の新たな業務はAIと「謝罪」です
私には、調達・購買担当者のころ、二人の師匠がいます。Fさんと、Iさんです。いろいろな上司がいますが、影響を受けたのはこの二人です。私は書籍で、上司からの学びを書いています。その大半が、この二人からの学びです。この二人の共通点をあげると、異常に厳しくて、異常に知識があって、論理性があって、そして痩せていたことです。現在ではすぐにパワハラといわれるので萎縮する上司が多いのですが、結局は覚悟の問題ではないでしょうか。
私は、二人の師匠がいる会社を退職しました。そのときの潔さは見習うところがあり、「部下が辞めるのは、会社の成長速度を上回ったからだ」という卓見ともいうべき態度を見せてくれました。こういう上司は、みなさんのまわりにいるでしょうか。
そのお二人に、先々週、ある企画で「若い調達・購買担当者に向けたメッセージ」を原稿依頼したところ、お二人とも、即返信があり承諾いただきました。これはひさびさに胸が熱くなりました。
ところで、その二人に共通するのは、自ら責任を取る覚悟です。いま、どうも、部下の失敗に責任を取ろうとしない上司が急増しているように思います。部下には厳しくする。しかし、部下の失敗の責任は自分でとる。これができていれば、自然と信頼関係が生まれるのではないでしょうか。
先日、極楽とんぼの加藤浩次さんと対談したのですが、現在、他者との最大の差別化は、失敗の数ではないかとおっしゃっていました。つまり、失敗した経験値が、優位性につながるというのです。たしかに失敗した恥ずかしい経験は、代えがたい財産になりますからね。
ある社長と話していると、社長は、謝長であるべきだと語っていました。社長は社員の責任をとって、取引先に謝るくらいの覚悟がなければならない、の意味でした。なるほど、感心しました。いや、もっというと、AIが仕事を代替する以上、あとは人間しかできない分野に特化せねばならないのではないでしょうか。土下座とか、謝罪とか、おのれを裸にする行為こそ、機械が絶対にできないはずです。
提携業務は、AIとRPA(業務の自動化)に任せる。そのために、調達・購買機能のインテリジェンス化を目指す。そして、任せたうえで、あとはドロドロとした崖っぷちでの経験値をあげつつ、人間力を磨く。これが、私は調達・購買機能の行き着く先のように思います。
合理と不合理といえます。あるいは、論理と無理、といってもいいでしょう。その双方を行き来するのが、私は、体外折衝を業務とする調達・購買機能が意識すべき点だと思うのです。その意味で、私は、合理・論理の側面から、AIやRPAの可能性を知ることが重要ではないでしょうか。そのうえで、本質的な将来の調達・購買戦略を練ること。
私が思うに、調達・購買担当者が学ぶべきは、AIなどのテクノロジーと、そして、任侠道です。
(今回の文章は坂口孝則が担当しました)