バイヤーたるスキルとは何か?
20年以上バイヤーをやっているけれど、バイヤーにとって必要なスキルを捜し求めることは、まさに終わりなき旅である。同じ会社で、同じような製品を買い続けていても、「あ、これ調べよう」と気づく「わからないこと」への出会いは日々ある。「ふ~ん」と思ってしまえば過ぎ去ってゆくことを一つ一つ拾ってゆけば、一日中本を読んだり、モニターとにらめっこをしなければならない。私は、バイヤーの難しさは、その守備範囲の広さにあり、バイヤーが強くなっていくためには、わからないことを理解する気持ちがとっても重要だと思っている。
バイヤーの守備範囲については、私が尊敬する方の言葉が忘れられない。日本能率協会が出している資材調達担当者、バイヤー向の資格であるCPPのテキストについて話をしていたときのことだ。その本を積むと4センチ以上になる非常に読み応えの有る本だが、その内容に関して、バイヤーの守備範囲がここまで広いとは思わなかったと改めて話をされていたのである。その方は、かつてバイヤーで、今は購買関係のコンサルティングをやっていらっしゃるのだが、そんなバイヤー道のプロ!という人でも、改めて感心するほどに広かったのである。実際私もその本を手にとって読んでみると、自分の知らないことのオンパレードだった。そしてあやふやに理解していることに気づかされたこともあったのである。
そう考えると、バイヤーのスキルとは、一言で言えば、「新しい環境への適応力」ではないかと思っている。「知らない」という状況を「理解している」という状況へ変えることができるか?例えば、今まで鋳物を担当していて、いきなり電装品へと購入担当製品を変えられても、担当サプライヤーが変わってもである。もっと言えば、会社が変わっても、新しい会社の事業や、社内のワークフローを理解して、仕事をする。それが一番大事かな?なんて思う。「買う」という基本は、どんな製品でも、どんなサプライヤーでも変わらないわけだから。私は今、心に強くそう思って仕事をしている。