自動車産業から見る将来像(坂口孝則)

先日、面白い話を聞きました。コンビニエンスストアの限界について。コンビニエンスストアでは、中国や米国が無人化しようとしています。アマゾン・ゴーなどは有名ですよね。

しかし、日本ではなかなか難しいという。なぜか、というと、その初期費用がかなりかかるからです。しかしセブンアンドワイはキャッシュリッチではないかと思うかもしれません。

問題はコンビニエンスストアのフランチャイズ方式にあります。つまり、本体ではなく、フランチャイジーは再投資するお金をもっていないのです。現在、コンビニエンスストアのオーナーたちが24時間働けないから半日営業に切り替えられないか討議しています。オーナー自身が働いているケースが大半ですから、働くほど稼げるにもかかわらず、このような状態です。

再投資の余裕はありません。

似たような状況は、モスバーガーにも当てはまります。個人オーナー、脱サラの人間を対象とし、モスバーガーはシェアを拡大してきました。それは時代によっては正解でした。数を確保できたのは間違いありません。ただし、現在では、個人オーナーが再投資できない状況を生み出しました。

つまり世の中は、単純な技術論だけでは語れないような状況があるのです。

そして話を自動車産業に移します。自動車では自動運転技術が進化しています。そうなるとどうなるでしょうか。現在、業界でいわれているのは、私の想像もつかなかった状況です。自動運転が加速していくと、どうなるか。

ドライバーが外を見る機会が減っていくと、クルマの内側を向くようになります。そうなると内装メーカーが注目を浴びるようになるのではないか。これまで内装メーカーは注目されてはいたものの、最重要はエンジンとかシャーシとか思われてきました。それが逆転するかもしれません。

私が興味をもったのは、次の点です。さらに自動運転が進むとどうなるか。現在、クルマが生き物だとすると90%は駐車場に停まっているといいます。ほとんど動いていないのです。残り10%しか動いていません。自動運転がさかんになり、必要な自動車だけになれば、「駐車場が不要になる」といいます。だから、貸し駐車場を推進する企業に明るい未来があるかはわからない、ということです。

さらに進むと、「信号の必要がなくなる」ともいえます。

さらに面白いのは、地下鉄が終焉を迎えるというものです。これは私も意外でした。というのも自動運転になるとタクシー運転手が減ります。タクシー運転手の労務費がタクシー料金の大半ですから、もしかするとタクシー料金は大幅に下がる可能性があります。そうすると地下鉄代金よりも安価になる可能性すらあります。そうすると、地下に潜ってわざわざ乗ろうとはしないだろう、という予想です。

以前、外国人旅行者は日本の公共交通機関に乗れないため、「始発駅か終点駅が立地として良い」とされました。現在はマシですが、英語表記などほとんどなく、駅員も英語を話せない、しかも乗り換えが難解だったからです。それが自動運転が進み、アプリから点から点への移動が可能になったらどうなるか。

それは立地戦略の終焉を意味します。これはものすごく大きいことです。企業は「立地こそすべて」といわれてきました。とくに小売店とか飲食店はそうです。どこに建てるかで、客の流れがわかる。集客数が決まる。そして、やっていけるかどうかがわかる。というのですね。その立地戦略が意味をなくしていく。

これは言葉を変えれば、ドラえもんの「どこでもドア」を誰もがもつ時代においては、店がどこにあろうが関係がない、ということになるでしょう。立地はもちろん魅力の一つではあるでしょう。しかし、立地だけ、の魅力ではダメな時代になるということです。

さらには自動車は、人工×0.5の法則があります。これは自動車がその国で飽和する台数です。計算してみれば、日本は6000万台です。実際に6000万台が存在します。もう飽和状態です。さらに、自動車の寿命は12年くらいです。6000万台を12年で割ると、500万台。これは、実際に日本で販売されている新車台数です。だから寿命需要しかありません。

シェアエリングの流れもありますし、自動車産業の生産台数が減っていくのは間違いありません。日本で技術を磨いて、そのあとに新興国に出ていくのか。あるいは、まったく違うビジネスモデルを構築していくのか。どちらかを選ぶ潮目になっています。

これまでどの時代も「激変の時代」といわれてきました。しかし、ほんとうに現在は「激変の時代」にふさわしいのかもしれません。

(つづく)

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