今どきのサプライヤー訪問を考える(牧野直哉)
前回に引き続き、サプライヤー訪問、中でも今回は工場訪問です。
●工場訪問当日のあるべき行動
ここまで、サプライヤー/工場訪問に関するさまざまな事前準備について述べてきました。今回は実際の訪問時のあるべき行動について述べます。
一概にサプライヤー/工場といっても、すべて同じようなレイアウトではありません。特に中小企業・小規模事業者では、道路からすぐ作業場/現場になっているような工場もありますし、大手企業では当たり前にある会議室や応接室といった場所のない企業もあります。そういったサプライヤーごとの違いは、臨機応変に対処します。
(1)適切な工場到着方法
工場立地によっては、最寄り駅からタクシーで向かう場合もあるでしょう。特に夏冬では、暑かったり寒かったりで、できるだけ外を歩きたくない気持ちも理解できます。できれば、徒歩で訪問先へ到着しましょう。タクシーの場合は、少し手前で降り、サプライヤーに到着しても、少し周囲を歩いて訪問先周辺の雰囲気を感じます。交通機関の最寄り駅やバス停から近ければ、徒歩で訪問先へ向かいましょう。
さまざまなセンサーの進化と通信技術の向上によってIoT技術が進化しています。人間がもつ五感もサプライヤー評価では重要なセンサーです。サプライヤーの近隣に到着したら、見て(外観)、聴いて(音)、嗅いで(臭気)、感じて(震動)サプライヤーを評価します。これら感じた内容は、その立地場所の「用途市域(わかりやすい説明はこちら→https://www.megasoft.co.jp/3d/setback_regulation/area_basic.php 」によっても判断基準が異なります。個人差があるものの、周囲を歩いて不快でないかの確認をお行います。その上で、サプライヤーへ到着し、担当者へコンタクトしましょう。
(2)いわゆる「あ[さつ」対応
訪問先へ到着したら、どんなサプライヤーであっても「ごあいさつ」をおこないます。ここで、一定の規模がある=組織としての体裁があるサプライヤーの場合、重要な確認点があります。
サプライヤーの誰があいさつするかです。これは、サプライヤー側のバイヤー企業に対する価値観が如実に表れます。取引関係を重要視しているバイヤー企業であれば、工場の幹部が登場するでしょうし、事務所の訪問でも営業部門のトップがあいさつします。誰があいさつするかで表される価値観は、大きく2つです。
1つめは、これまでの取引への感謝の念。2つめは、将来的なビジネスへの期待です。こういったサプライヤーにとってバイヤー企業との取引価値を見極める場は貴重です。①誰が ②どのくらいの時間対応してくれたのかは、必ず記録しましょう。人数が多ければ多いほど、時間が長ければ長いほどに、サプライヤーはバイヤー企業を重要視していると判断可能です。
サプライヤーにとってのバイヤー企業の価値観は、バイヤーの個人的な取り組みによっても改善可能です。前回訪問時よりもあいさつに出てくる人が増えた場合は、重要度が向上したと判断します。サプライヤー訪問は、サプライヤーの実態を掌握するのが目的です。バイヤー企業の価値アップには、訪問時にバイヤーとしてサプライヤーへどんな価値をもたらすかが影響します。業界やバイヤー企業の見通しや、根拠をもったサプライヤーへの改善要望を、簡潔にまとめて伝えられるかどうかです。サプライヤーから一方的な情報提供だけを求めるのは、普通のバイヤーです。一風違った価値あるバイヤーを目指すのであれば、サプライヤーに有効な情報を持参します。
(3)いざ、工場へ
あいさつが終了したら、具体的な目的を実現するための実務をおこないます。サプライヤー担当者との打ち合わせや工場見学です。工場見学へ行く際の注意事項です。最初に通された部屋から工場まで歩くときも、サプライヤーの考え方を見極める情報収集のポイントがあります。
①通路・廊下は適度に明るいか
サプライヤーによっては節電目的で通路や廊下の電灯をオフにしているケースがあります。「JIS照明基準」によると、屋内の非常階段で50ルクスの照度が規定されています。明るさの50ルクスの目安は、エレベーター内の明るさです。「かごの床面で五十ルクス(乗用エレベーター及び寝台用エレベーター以外のエレベーターにあっては二十五ルクス)以上の照度を確保することができる照明装置を設けること。出典:平成20年12月10日国土交通省告示第1455号」と規定されています。警視庁の「安全・安心まちづくり推進要綱」では「人の顔、行動を明確に識別できる程度以上の照度、10m先の人の顔、行動が識別でき、誰であるかを明確にわかる程度以上の照度」と表現されています。窓がない建物内の廊下の場合は、電灯ONが通路や廊下を行き交う人の安全確保の観点からも、節電よりも優先されるレベルです。
この点は、問題点を指摘するよりも、サプライヤーが従業員や来訪者の安全をどこまで考えているかの目安です。
②目標や達成数、順守事項に関する掲示があるか
掲示があるだけでは、考え方や方針が従業員まで浸透していると判断できません。掲示物の有無は、経営者が目標や自分の考えを従業員へ伝えようとしているかの姿勢の判断材料です。
③5S
ピカピカに磨かれている必要はありません。ゴミや汚れが目立つ場合は、製造現場でも同じ傾向が見て取れます。5Sは品質や安全に直結する取り組みです。
工場やオフィスを訪問するとき、いろいろな情報が目に飛び込み、耳に入ってきています。そういった情報のもつ意味をあらかじめ理解しているかどうかで、限られたサプライヤー訪問の時間を有効活用できるかどうか決まります。次回は、作業内容の確認方法について述べます。
(つづく)