連載「2019年から2038年まで何が起きるか」(坂口孝則)

*2019年から2038年まで日本で起きることを予想し、みなさまのビジネスに応用いただく連載です。

<2028年①>

「2028年 世界人口80億人を突破」
そして水が新たな資源となり、ビジネスとなる

P・Politics(政治):国家は食料を自国民に与えることから、自国民に水を飲ませることに関心が移っていく。
E・Economy(経済):世界で水を扱うビジネスが勃興する。
S・Society(社会):人口は80億人を突破すると同時に、水資源が貴重になってくる。
T・Technology(技術):水精製機器の小型化。

2028年ごろには世界人口が80億人を突破する。そのとき、食料に代わって、事態が深刻化するのは水だ。現在でも将来でも、世界人口の大半が安全な水にアクセスできないといわれている。
水の精製、濾過技術。また、漏水を防ぐもの、あるいは節約商品など、ビジネスの観点からはさまざまな展開が考えられる。

・天才ヘッジファンドマネージャー

映画『マネー・ショート 華麗なる大逆転』は、サブプライム・ショックを予想した男たちが、いかに空売りを仕掛け大儲けしたかを描いた傑作だ。

米国ではサブプライム・ショックの前まで、住宅市場に湧いていた。そこでは低年収のひとたちでも、たやすく住宅ローンが組め、かつ住宅価格が上昇していたから売却して利ざやまで稼げた。金融屋は、それらリスク債権を複合的に組み合わせることで、リスクをヘッジし(ているように思い込み)、住宅バブルを拡大していった。

そんななか、同映画に出てくる主人公たちは、住宅ローン返済の焦げ付きが目立ってきたことや、街のストリッパーまで5軒の家を持ちうる異常さに気づき、巨額の空売りという大勝負に出る。

この映画のなかでも、つねにヘビーメタルとハードロックを聴き続けながら、部屋に閉じこもって投資を続けるマイケル・バーリが印象的だ。人とのふれあいを嫌い、流布する情報ではなく、みずからが集めた情報によって市場を読み、歪みを見つけていく。

映画の終了間際、驚いたのは彼の次なる投資対象だ。映画は、主人公たちのその後を字幕で伝えるが、鬼才マイケル・バーリは「水」を投資対象としているという。

あの、水――、だ。

・人口の減少と高止まり

日本が人口減少にいたっているのは何度も指摘したとおりだ。2025年ころからは東京でも人口減少が予想されている。

そのいっぽうで、世界では、この2028年に人口が80億人になると予想されている。もちろん細かな仮定の違いはあるし、今後、何が起きるかわからない。ただ、おおむね、この2028年あたりだ。人口が70億人をこえたのは2011年10月のことで、十数年で次の十億人にたっする。

しかし、この人口がずっと線形的に伸びてきたかというと、急増したのは、地球の歴史からすると、ごく最近であるとわかる。人類、ホモ・サピエンスの歴史は20万年だが、人口の急増はこの300年ほどにすぎない。しかしこの300年の伸びは激しく、マルサスは1826年にあの有名な『人口論』で、食料の伸びよりも人口の伸びが激しいので、人口を抑制しろと主張したほどだった。

数百年後の予想は難しいものの、2100年には100億人にたっする。そして、そののち、伸びは緩やかになり、人口は横ばいになると予想される。

(グラフ縦軸:百万人、横軸:西暦)

つまりいまが急激に増えている最中で、この例外を除くと、出生率は安定化し、横ばいになる。前述のとおり、アフリカは伸びるだろうが、欧州や日本、中国といった国々は、負の影響を受けていく。しかし、それとて、「先進」国というとおり、長い歴史から見ると、他の国々の先を走っただけにすぎない。

考えてみると、たとえば日本で人口が半分の6000万人になったとしたら、企業の顧客対象も半分になってしまう。これでは経営は成り立たない。しかし、6000万人以下の小国などどこにでもある。たとえば店舗や従業員も半分になったら、それはそれで成り立つ。だから「人口減といっても悪くはない」とする論者もいる。極端には約60万人のルクセンブルクは労働生産性が世界でトップではないか、と。

ただ、問題は、この半分に至るまでの過程で、そこには縮小・閉店・リストラなど、あまりに多くの苦痛を伴う。人口減国家は、その過程で、富をえられないひとたちが格差を訴える。そして逆に急増の国家では、CO2排出などにかまっていられずに、とにかく拡大を試みねばならない。

そのいくつかの軋みのなかで、80億人をどうやって食わせるかという食料問題や、あるいは高齢化問題、そしてアフリカや中国の人口増減問題がある。しかし、それらは節をあらためて書いている。そこで、人口増にともなって、近年、食料よりも問題注目されている水資源問題がある。食糧危機は、生産性の向上でなんとか乗り切れるかもしれない。しかし、水はかなりやっかいだ。次回に世界の人口増で問題となる、水についてとりあげたい。

<つづく>

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