花嫁を盗んでくるビジネス(坂口孝則)
この場でもよく書く通り、ベトナムなどに出張に行きます。そうすると、花嫁が消えていく、という話を聞かされます。
説明が必要でしょう。現在、中国では、一人っ子政策は終わりました。しかし、長年続いた一人っ子政策のために、結婚適齢期の男性3400万人以上が結婚できません。日本の未婚問題とは違います。なぜなら、中国の問題は、そもそも男性が多いのです。この理由はさまざまに考えられますが、女児が生まれた場合は間引きも起こっている、などです。
たとえば、中国における出生性比を見てみましょう(http://hdr.undp.org/sites/default/files/2016_human_development_report.pdf)。これは文字通り、出生時における男女の差異を表現しています。値が大きいほうが、男の子が多い事実を指します。そのなかで、中国:1.16と世界ランキング1位となっています。
そこで花嫁は、”海外調達”するしかない、となります。
先日、中国はベトナムと国境にある雲南省で、大規模な女性誘拐組織を逮捕しました。そこにいたのは、まだ十代の女性が大半で、中国の農村に、それぞれ一人ずつ供給される予定でした。一人ずつ、の理由は、集団だと逃げる可能性が高いからです。一人であれば、中国の農村全体で隠せば、その娘は逃げられません。
年間1000人以上の、こういった女性たちが解放されていると、中国政府は胸をはります。しかし、あくまでそれは解放であって、総数は何人なのか、まったく見当もつかない状況にあります。中国の友人をもっている方々ならおわかりでしょうが、中国は(まるでかつての愛知県のように)花嫁にたいし、莫大なお金をかけます。ただ、こういう外国”産”花嫁であれば、お金が抑えられるというメリットもあるようです。
強引に連れさるケースばかりではありません。「中国人の金持ちがあなたに興味をもっている」「中国で働く道がある」と甘言で誘うものもあります。または、拉致のような形です。もちろん、その後は、農村で強姦され、事実上の夫婦となり、子どもを産んでいきます。疑いがかけられているのは、地方そのものが黙認しているのではないかということです。だって、中国語も話せない若いベトナム人女性がとつぜん、隣の家で生活していたら、地方の警察だっておかしいと思うでしょう。しかし通報されない。
先日、米国は中国を人身売買の項目で最低ランクの「第三階層」に指定しました。これは、ダントツで最低の水準です。さらに金融商品のように、花嫁のブローカーから、他の農村に転売して売り逃げる業者もおり、たった数万円で請け負うようです。無国籍の女性たちは、今後、大きな国際問題に発展するでしょう。
逆に花嫁不足で悩む農村にとっては、皮肉な話ながら、数万円で性奴隷にもなる女性を調達できるので、誘拐ビジネスが勃興しているのです。
もっともこれは中国にかぎった話ではありません。インドや、あるいは、アラブからも、ベトナムに花嫁をもとめ、バイヤーがやってきています。そこで、女性を並べ、男性が「どの女にするか」を品定めする光景は、もはや人権意識がないとしか思えません。
私は過度な人権支持者、あるいはフェミニストではありません。ただ、女性の権利を保証しない国家は、あるいは軽んじる国家は、その発展が阻害されます。
<了>