講演録~これから求められる調達イノベーションとは(牧野直哉)
(前回からの続きです)
それでは、X革新時代における調達部門の最終目標を3つ述べたいと思います。いずれも、従来こうだったけどこれからはこうなります、といった形で述べます。
まずは、従来はコストダウンが調達部門における重要な取り組になっていました。先ほど述べましたが、コストダウンは引き続き重要な取り組みであり、競合他社に対して後れを取ると、それは自社の競争力に大きな影響を及ぼします。したがってコストダウンは引き続き行うわけですが、果たしてコストダウンとはどうして行うのでしょうか。われわれがコストダウンを行うのは、企業としての利益確保が最終的な目的であるはずです。
例えば、調達部門として声、高らかに「コストダウンを達成した!」と、成果を誇示しても、企業として最終的に赤字であれば残念ながら評価にはつながらないはずです。調達部門のコストダウンがなければ、赤字幅もっと拡大していたはずだ、といった事実もあるかもしれません。しかし、調達部門がコストダウンを行っても最終的な業績が赤字であれば、その赤字の発生原因の部分に、調達部門としてもメスを入れて改善したかどうかが重要です。ことによっては、営業に対して「安く売りすぎだ!」とか、技術部門や企画部門に対して「仕事が遅い、アウトプットが遅すぎる」といった苦言も必要なのです。
続いて、調達部門にとって欠くことのできないサプライヤーから納入を受けるモノやサービスの「納期順守率」ではなく、お客さまとの「契約納期順守率」の貢献を調達部門として目指すべきです。結果的には同じかもしれませんが、これも先ほどのコストダウンと同じく、サプライヤーからの納入に遅れがなくとも、お客さまとの契約納期に遅れてしまえば、サプライヤーからの納期を守った調達部門の取り組みも残念ながらかすんでしまいます。もし、サプライヤーの納期順守率よりも顧客との契約納期順守率が低い場合は、明らかに社内に何らかの問題がある証です。サプライヤーから時間通り、期日どおり納入してもらった結果を生かすためにも、調達部門として契約納期順守率を最終的な目標にするべきです。
また、サプライヤーからの納入を受けたモノやサービスが適正な内容であったかどうか。モノであれば、受け入れ検査合格率といった指標でサプライヤーの優劣を判断しているはずです。これはなぜ行っているのか。不適合品を現場に投入しない、あるいはお客さまに流出させないために、サプライヤーから自社内の流入を防ぐのです。こういった取り組みは最終的には顧客満足度にその成果が現れます。調達部門ではサプライヤーから納入を受けたモノやサービスに対して、受領時の品質の善しあしによって、サプライヤーの優劣を判断するはずです。なぜサプライヤーは優秀がいいのか。それは最終的に自社のお客さまの満足度を高める目的を忘れてはなりません。
この3つの観点は、調達部門であってもサプライヤーだけでなく、顧客との契約順守、そして適正利益確保にどの程度貢献したのかが重要である証です。もちろんこれまでも、お客さまから満足をいただくために、調達部門におけるさまざまな管理を行ってきたはずです。ここで言いたいのは、社内のサプライチェーンから判断すると、調達部門はお客さまから遠い位置にあります。しかし、遠いからといってお客さまが満足しているかどうか、競合他社よりも優位性があるのかどうかといった企業全体の競争力からは逃れられない、だからこそどのように貢献するか、どのように競争力をアップさせるかが重要であると考えてほしいのです。
では、3つの最終目標を実現させるためには何が必要か。わたしは「よくよく考える」必要性を重要視しています。調達・購買部門ですから、価格的には安く、納期的には早く、品質的には良く、を目指しているはずですね。こういった点も、もちろん重要です。しかし一方踏み込んで、日常業務の中で何かに疑問を持っていただきたいと考えています。
なぜ、これを買うのか?
なぜ、この予算なのか?
なぜ、この納期なのか?
なぜ、この購入条件が必要か?
そして・・・何を買うべきなのか?
お客さまのニーズも変化し、企業の置かれたさまざまな環境が変化する中で、われわれが買うものだけが変わらないという事は有り得ません。今よりもより良い外部調達ができるかどうか、そのために必要なイノベーションは、この4つのなぜを考えた上で、最終的に何を買えば業績に貢献できるのかといった問いを自らに課して、回答を探し続けるかないと思っています。■■講演録~これから求められる調達イノベーションとは(牧野直哉)■■
(前回からの続きです)
それでは、X革新時代における調達部門の最終目標を3つ述べたいと思います。いずれも、従来こうだったけどこれからはこうなります、といった形で述べます。
まずは、従来はコストダウンが調達部門における重要な取り組になっていました。先ほど述べましたが、コストダウンは引き続き重要な取り組みであり、競合他社に対して後れを取ると、それは自社の競争力に大きな影響を及ぼします。したがってコストダウンは引き続き行うわけですが、果たしてコストダウンとはどうして行うのでしょうか。われわれがコストダウンを行うのは、企業としての利益確保が最終的な目的であるはずです。
例えば、調達部門として声、高らかに「コストダウンを達成した!」と、成果を誇示しても、企業として最終的に赤字であれば残念ながら評価にはつながらないはずです。調達部門のコストダウンがなければ、赤字幅もっと拡大していたはずだ、といった事実もあるかもしれません。しかし、調達部門がコストダウンを行っても最終的な業績が赤字であれば、その赤字の発生原因の部分に、調達部門としてもメスを入れて改善したかどうかが重要です。ことによっては、営業に対して「安く売りすぎだ!」とか、技術部門や企画部門に対して「仕事が遅い、アウトプットが遅すぎる」といった苦言も必要なのです。
続いて、調達部門にとって欠くことのできないサプライヤーから納入を受けるモノやサービスの「納期順守率」ではなく、お客さまとの「契約納期順守率」の貢献を調達部門として目指すべきです。結果的には同じかもしれませんが、これも先ほどのコストダウンと同じく、サプライヤーからの納入に遅れがなくとも、お客さまとの契約納期に遅れてしまえば、サプライヤーからの納期を守った調達部門の取り組みも残念ながらかすんでしまいます。もし、サプライヤーの納期順守率よりも顧客との契約納期順守率が低い場合は、明らかに社内に何らかの問題がある証です。サプライヤーから時間通り、期日どおり納入してもらった結果を生かすためにも、調達部門として契約納期順守率を最終的な目標にするべきです。
また、サプライヤーからの納入を受けたモノやサービスが適正な内容であったかどうか。モノであれば、受け入れ検査合格率といった指標でサプライヤーの優劣を判断しているはずです。これはなぜ行っているのか。不適合品を現場に投入しない、あるいはお客さまに流出させないために、サプライヤーから自社内の流入を防ぐのです。こういった取り組みは最終的には顧客満足度にその成果が現れます。調達部門ではサプライヤーから納入を受けたモノやサービスに対して、受領時の品質の善しあしによって、サプライヤーの優劣を判断するはずです。なぜサプライヤーは優秀がいいのか。それは最終的に自社のお客さまの満足度を高める目的を忘れてはなりません。
この3つの観点は、調達部門であってもサプライヤーだけでなく、顧客との契約順守、そして適正利益確保にどの程度貢献したのかが重要である証です。もちろんこれまでも、お客さまから満足をいただくために、調達部門におけるさまざまな管理を行ってきたはずです。ここで言いたいのは、社内のサプライチェーンから判断すると、調達部門はお客さまから遠い位置にあります。しかし、遠いからといってお客さまが満足しているかどうか、競合他社よりも優位性があるのかどうかといった企業全体の競争力からは逃れられない、だからこそどのように貢献するか、どのように競争力をアップさせるかが重要であると考えてほしいのです。
では、3つの最終目標を実現させるためには何が必要か。わたしは「よくよく考える」必要性を重要視しています。調達・購買部門ですから、価格的には安く、納期的には早く、品質的には良く、を目指しているはずですね。こういった点も、もちろん重要です。しかし一方踏み込んで、日常業務の中で何かに疑問を持っていただきたいと考えています。
なぜ、これを買うのか?
なぜ、この予算なのか?
なぜ、この納期なのか?
なぜ、この購入条件が必要か?
そして・・・何を買うべきなのか?
お客さまのニーズも変化し、企業の置かれたさまざまな環境が変化する中で、われわれが買うものだけが変わらないという事は有り得ません。今よりもより良い外部調達ができるかどうか、そのために必要なイノベーションは、この4つのなぜを考えた上で、最終的に何を買えば業績に貢献できるのかといった問いを自らに課して、回答を探し続けるかないと思っています。
(おわり)