カンボジアの作業者調達に潜入してみた(坂口孝則)

前回のベトナムに引き続いて、カンボジアです。簡単にいうとカンボジア人作業者のリクルーティングです。

カンボジアは、ASEAN加盟国、通貨はリエル、人口1,513万人、首都はプノンペン。1970年にカンボジア王国が倒れてから勃発したカンボジア内戦を経て、1993年に誕生した(wikiより一部引用)……というカンボジアで人材調達のお手伝いをしてきました。

カンボジアはリエルに両替せずとも米ドルさえもっていればどこでも使えます。私はカンボジアは20年ぶりだったのですが、すべてが変わっておりました。

カンボジアでの面接ですが、養成機関は候補者を三倍以内に絞ります。たとえば、日本企業がカンボジア人を3人採用したい、ということであれば、9人の候補者です。自己紹介までは日本語で、それ以降は通訳込での会話となります。

一般的にカンボジア人は勤勉ですが、なかには素行の荒い人もいます。ですので、採用が決まっても、数カ月は様子を見て日本に適合できるかを確認してもらいます。訊いてみるとカンボジア人の希望月収(手取り)は10万円です。彼らは、高卒で母国で働くと2万円くらいですから、5倍ももらえる、というイメージです。

ポル・ポト政権で人口の1/3が死んだ国ですから平均年齢も二十代中盤と若く、やる気はあります。しかし、何が悪いのか、という倫理観のない(本人のせいではなく、環境の問題)場合があり、たとえば、物を借りて返す習慣がないとか、道端でおしっこするとか、もろもろ問題があります。

経済成長が高いため、自らの生産性をあげようという気概は感じられませんでした。つまり、学ぶし、頑張る。でも、働き口を見つけたら、そこで指示通りやっておこう、というスタンスです。難しいですね。ただ、「指示されたこともできない日本人」も多いので、指示されたことでもちゃんとやれば価値はあるのかもしれませんね。

さて、作業者は日本語を学習します。3クラスを見学しましたが、やはりまあ1年以内であればこのレベルかな、という感じです。

作業者「はじめました」
私「はじめまして。家族は何人ですか」
作業者「プノンペンに住んでいます」
私「お父さんの仕事は?」
作業者「お父さんは生きています」
私「日本で何がしたいですか」
作業者「東京です」

などと、まあまあ崩れた会話を楽しみました。ただ、面白いのはカンボジアの学校では、普通語と敬語をわけて教えているのです。先生いわく「教科書のような会話はありません。日本人は、『それをとってください』ではなく『とって』としかいいません。でも、返事は敬語でなければなりません」と教えていました。口語でも敬語で返せと、なんだか微笑ましい光景でした。

面接の写真は都合で掲載できません。ただ、外国人スタッフを面接するときのコツは先週書きましたので省略します。ただ、感じたことを書きます。

日本でも同じように、「まじめに取り組もうとする姿勢」と「愛嬌」さえあれば、おおむねなんとかなります。山崎元さんの大傑作「僕はこうやって11回転職に成功した」にこのようなシーンがあります。山崎さんに会社の先輩がアドバイスする箇所です。<「山崎、お前は仕事の方は何とかやっていけるだろう。大丈夫だ。これから、大事なことを教えてやるから、よく聞いておけ」と言う。『第一に、意見は大きな声で言え。そして、これが肝心なことだが、誰にでも同じことを言うのだ。誰にでも、だぞ。第二に、意見は会社のためを思って言え。本当に会社のためを思って言った意見ならば、仮に間違えていたとしても、後から必ず助かる。これは信じていい。そして、最後にな、『こいつは、ちょっと可愛いな』と他人に思わせるような何かがあれば、なおいいな。可愛げというのは大事なもんだぞ」>。これは記録してもいいくらいのアドバイスでしょう。

だから面接では、割り切って、「まじめに取り組もうとする姿勢」があるか、そして「愛嬌」があるかを重点的に聞けばいいことになります。そのために、何か細かな作業をやらせるとか、あるいは、めちゃくちゃ時間がかかることをどうこなすかを見ればいいのです。そして、愛嬌は、文字通り、会話のなかから感じるものです。

それにしても写真を貼っておきましたが習字の練習などもしています。さらに5Sも徹底しています。受け入れる側の日本も、彼らの失望を見ない(させない)ようにしたいものですね。

<了>

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