連載「2019年から2038年まで何が起きるか」(坂口孝則)

*2019年から2038年まで日本で起きることを予想し、みなさまのビジネスに応用いただく連載です。

<2019年②>

「2019年セブンイレブンが沖縄進出。大手三社が日本制覇」
コンビニが飽和へ。ポストコンビニが本格化

P・Politics(政治):行政で買い物難民の対策進む。民間事業者等への費用補助や助成等の支援が加速する。
E・Economy(経済):コンビニが四十七都道府県制覇へ。需要は伸び悩み、既存店の客数や売上高は減少傾向にある。いっぽう、中食化が進み、コンビニで惣菜を買う女性客やシニアは伸び、残存成長分野。
S・Society(社会): 単身世帯数は伸びるものの、大家族は減少傾向。
T・Technology(技術):オムニチャネル化により、シームレスな消費者との接点が生まれる。店舗注文→自宅受け取り、ネット注文→店舗受け取り、などの多様化が進む。

・コンビニが講じる対策
たとえば、株式会社セブン&アイホールディングスの2017年2月期 決算説明会資料(経営方針)によると、利用者の利率が大幅に変わったことを示している。約10年間で、女性のコンビニ利用比率5%ほどあがり、半数の利用者はもう女性になっている。

女性に加えて、とくに高齢者の伸びは特出している。だから、それを示すように、酒類や雑誌の売上は激減するいっぽうで、冷凍食品やカウンター商品は、中食をもとめて、この層の消費者が買い求め大幅な伸びとなっている。

多くのコンビニも、女性とシニア、という二軸は欠かせないだろう。これから商品やサービスも対象として考えられる。

また、よくコンビニには入口近くに雑誌コーナーを置いているといわれる。なぜならば、立ち読みする人を外部に晒すことによって、道行く人を訴求するからだ。しかし、いまではかならずしも正しくない。新店舗設計の思想では、入り口の近くに雑誌コーナーをむしろ置かず、イートインコーナーを拡充している。雑誌を読む人ではなく、中食を食べるひとが訴求力をもつのだ。あるいは冷食といわれる冷凍食品を入口近くに大胆に配置することで、食のコンビニをアピールしている(http://www.7andi.com/dbps_data/_template_/_user_/_SITE_/localhost/_res/ir/library/ks/pdf/2017_0406ks_02.pdf)。

・コンビニと買い物弱者問題
もちろん、コンビニの役割が終わったかというと、そうではない。コンビニは全国津々浦々にある、最強で最小の小売店であるのは間違いない。地方の過疎化が進んでいるなか問題となっているのは、買い物弱者だ。高齢者等を中心に食料品の購入や飲食に不便や苦労を感じる方のことで、自動車などのモビリティをもっていない、あるいは運転できない場合は、文字通り買物ができなくなる。

そこで農林水産省は調査に乗り出している。まず、定義として「大都市:政令指定都市及び東京23区」「中都市:人口5万人以上の都市(大都市を除く)」「小都市:人口5万人未満の都市」とするならば、都市が小さくなるほど対策の必要性が高まっている。

すぐに考えられるのは、買い物弱者にたいする配送サービスだ。くわえて、単身世帯の増加や、シニアの増加を考えるならば、商品の小型化は欠かせない。また、それは、全国の消費者に、ただただ大量の商品を与えるのではない。もちろん、各社ともプライベートブランドの拡充を努めているが、同時に、地域限定商品の劇的な拡充を目論んでいる。地域限定商品の比率は、将来的に全商品の半分くらいに引き上げるだろう。地域の特性を考慮したうえで、各店舗では、商品仕入をかなり細かく実施する。かつてはコンビニによって地域文化が損なわれるとも懸念されたものの、現状は、その逆に進んでいるのである。

・思想
コンビニは日本の消費実態を調べる実験場となってきた。POSが導入されたのも、バーコードが商品に印刷されるようになったのも、コンビニが起点だ。それまで商品の仕入れは、KKDH(勘・経験・度胸・はったり)に支配されていた。何個くらい仕入れるか、そしてタイミングは個々人まかせだった。コンビニエンスストアにある3000~3500アイテムのすべてについて、誰がいつ何個を購入しているか確認すれば、効率的な仕入れができる。

セブンイレブンが他に先駆けてPOSシステムを導入したのが1982年だ。売れ筋を見つけるだけではなく、「絶対性」を目指す同社にとってPOSは、どのような売り方で最大にさばけるかを検証する武器だった。当時の資料を読むと、POSデータを分析し、売れなかった理由を希求するさまが描かれている。

日本のコンビニ黎明期に書かれた記事を読むと、むしろ先発の米国の遅れを指摘するものが目立つ。米国は土地代が安く、商品の在庫化に躊躇がない。それにたいして、土地代の高い都心部から発進した日本コンビニは在庫数に敏感にならざるをえなかった。

効率化を極限まで目指し、日本のカイゼンと組み合わせ、最適時点での納品、商品品質の向上、商品の品揃え強化……etc、はお家芸として成長し、ついには米国セブンイレブンを日本が買収するにいたった。

以前(この1回目の連載で)、黒川紀章さんの意見を紹介した。日本が移動国民として、居住空間などをミニマム化する代わりに、コンビニが冷蔵庫や倉庫の代替として活用されていたとすれば、その飽和は近づいている。やや話を変えるようだが、クロネコヤマト宅急便の創始者・小倉昌男さんは、かつてヤマトの営業所を検討する際に、1200という数字を割り出した。これは警察署の数だ。おおむね一つの拠点が見られる範囲で、全国1200店が導かれた。

コンビニは現在、6万店ちかくある。この数に見合う新役割が期待される。考えられるのは、移動「される」側ではなく、移動「していく」側だ。つまり、黒川紀章さんの論を引いたとおり、日本人が移動する先としてコンビニが期待されていた。しかし、そもそも日本人が移動できなくなるのだ。買物難民の救済をも含めた国内インフラとして役割が期待されるだろう。

たとえば、モノのインターネットが発達すると、家のデバイスはつねにネットをつながる。そうすると、冷蔵庫などは家庭に無償配布されるだろう。冷蔵庫から飲料の減り具合のデータを通知すれば近くのコンビニからの配送で自動補充される仕組みだ。コンビニはそのマージンで冷蔵庫コスト分を補充できるし、健康的なメニューも提案できる。それはまさに御用聞き2.0ともいうべきビジネスの萌芽である。

・考察
これまでコンビニはあらゆる業態を飲み込んで成長してきた。酒屋の代替としてはじまり、弁当屋、本屋、日用品、郵便局、そしてスーパーマーケット。さらにコンビニは、カフェ、ドーナツ、そしてイートインを有しファミレスの代替も図ってきた。ネット通販の受け取り場所としても活用されている。さらにはコンビニでは、ストーカーからの逃げ場として、保護施設としての役割も担ってきた。その保護女性数は年間2万人を超える。

さて、これ以降のコンビニの役割は、どうなるだろう。私は「葬儀屋」と「土」だと思いう。葬儀屋とはもちろん終活だ。現在、大型スーパーでは、シニア同士の憩いの場を創出するために、将棋場や、囲碁場を置くトレンドがある。そこから、もっと発展して、御用聞きのなかにシニア同士の出会いを生むものが必要とされるに違いない。老人ホームでもっとも話にあがるのは「あのおばあちゃんは俺のこと好き」だ。何歳になっても色から離れることはできない。シニアの単身世帯が増えるなか、一緒に葬儀を迎える「出会い系」が必要とされている。

次に、コンビニは、DIY、つまりホームセンターの要素を持たなければいけない。なぜか毎日、足を運んでしまう場所としてのコンビニだ。実際にホームセンターは、シニアが毎日のように足を運ぶ。一昔前には水=ミネラルウォーターを買う行為は信じられなかった。水道水でじゅうぶんだからだ。しかし、水を買うようになった。私は次に、庭や植物の土を買う時代がやってくると思う。

これはヨーロッパのどこの土、あるいはアフリカのどこの土、南米の……という、土なる自然の消費する時代がやってくるだろう。

<つづく>

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