調達・購買戦略入門(坂口孝則)

25のジャンルにわけて解説しています。今回は決算書について考えます。

 

会社は、決算書で一定期間の売上高と利益を開示します。成長性や、他社との優劣を示します。会社は、決算書によって、保有している資産や、どれだけ借金があるかなど開示します。これで、自社の安全性を示します。

成績や資産を示すといっても、会社ごとに任せてはバラバラになってしまいます。だから、会社は一定のルールに従って決算書を作らなければなりません。ルールに従った決算書は、公的な書類として、お金を集めたり、社外的なアピールとして使われます。

決算書には代表的な三つの資料があって、角度を変えながら会社の評価を実施します。

損益計算書(P/L:Profit and Loss Statement)
会社がアスリートだとしたら、大会で獲得した賞金(儲け)を見るもの。経営成績を示し、「収益―費用=利益」となる一連の流れを記載する。

貸借対照表(B/S:Balance Sheet)
会社が大会で賞金を獲得するまでに、どのように鍛えたか、あるいは潜在的能力や底力を見るもの。財政状態を示し、資金調達の源泉や、その運用状況を記載する。

キャッシュ・フロー計算書(C/F:Cash Flow Statement)
あとで詳しく説明するものの、その大会で獲得したとされる金額と実際に手に入ったお金が一致しないことがある。そこで、キャッシュ・フロー計算書では、手許に現金・現金同等物がどれだけ残ったのか(減ったのか)を示す。

三つの資料は、それぞれ絡み合いながら存在しています。まずは損益計算書について見ていくことにします。

損益計算書を見ながら、計算式を思い出してください。「収益―費用=利益」です。ここで、「収益」という言葉にひっかかってください。収益とは、売上高だけではなく特別利「益」なども含みます。費用や利益も同じで、損益計算書にはそれらがいくつも表現されているのです。

さて、損益計算書を調べてみましょう。コツは下からです。なぜか? 一番下には、当期純利益という最終的な儲けを示す額が記載されています。だって儲けるために会社はあります。ならば、まずはそこから見てみましょう。

もちろん、そこから経常利益や営業利益・売上総利益を見ていきましょう。そして、売上高との比率を計算してみましょう。

当期純利益:税金も引いた事業の最終的な利益
経常利益:財務活動を含め、その会社が達成した利益
営業利益:本業で達成した利益
売上総利益:粗利益とも呼ぶ、売上高から売上原価を引いた利益

比率を計算したら意外に少ないと思うはずです。経常利益率(経常利益÷売上高)は、3~7%くらいでしょう。100万円売っても、3万円ほどしか残らない。さらに、当期純利益はほとんど残らない。しかも、それも業績が良いといわれている会社で。油断したらすぐに利益は飛んでいく。

『売上高や利益の比較の対象』
自社の過去実績……売上高・利益の推移を確認し、増減を正しく把握する
同業他社実績……業界のなかでの自社の位置づけと、平均利益率とのギャップを把握する

重要なのは、常に一つだけの数字から理解しようとしないことです。また、会社によっては、薄利多売であっても、利益の絶対額を増やそうという戦略を持つ場合もあります。会社の規模が同じだったとしたら、売上高100億円で、利益が10億円のところ(利益率10%)と、売上高120億円で、利益が11億円のところ(利益率9.2%)では、後者のほうが多くの利益を稼いでいると評価することもできます。

<つづく>

無料で最強の調達・購買教材を提供していますのでご覧ください

あわせて読みたい