連載「2019年から2038年まで何が起きるか」(坂口孝則)
*2019年から2038年まで日本で起きることを予想し、みなさまのビジネスに応用いただく連載です。
<2019年①>
「2019年セブンイレブンが沖縄進出。大手三社が日本制覇」
コンビニが飽和へ。ポストコンビニが本格化
P・Politics(政治):行政で買い物難民の対策進む。民間事業者等への費用補助や助成等の支援が加速する。
E・Economy(経済):コンビニが四十七都道府県制覇へ。需要は伸び悩み、既存店の客数や売上高は減少傾向にある。いっぽう、中食化が進み、コンビニで惣菜を買う女性客やシニアは伸び、残存成長分野。
S・Society(社会): 単身世帯数は伸びるものの、大家族は減少傾向。
T・Technology(技術):オムニチャネル化により、シームレスな消費者との接点が生まれる。店舗注文→自宅受け取り、ネット注文→店舗受け取り、などの多様化が進む。
・コンビニ誕生の歴史必然と限界
日本の家について「ウサギ小屋」と呼ばれる。これは、ヨーロッパ共同体1979年に出した非公式報告書『対日経済戦略報告書』を起源とする。しかし、ウサギ小屋とは、かならずしも下に見た表現ではなく、また、狭いからでもなかった。むしろ、住生活を演出する家具が貧弱すぎる点を指していた。
そのうえで、私が興味深いのは、「ウサギ小屋」なる単語を、日本人が自ら進んで自虐的な意味で使いだしたように思えるからだ。海外からこう言われている、と卑下したかのような自己肯定に「活用」された。
私も、妙に広いホテルだと一人で居るのが落ち着かない。また、現在では減築がブームだ。莫大な土地を有しても欧米のような豪邸を建てるひとは少ない。むしろ、私は日本人がミニマムな生活を選んできたのではないかと思う。
かつて黒川紀章さんは、日本人が自動車のなかにぬいぐるみを置いて住空間かのように施すのは、第二の居住空間と位置づけ、自動車という移動手段によって銭湯だとか商店に移動し、街全体で共生していると説いた。家という空間はミニマム化しても、外部との接点を増やして生活空間を拡大していく。
その観点からいえば、自動車すらも不要な近場になんでも揃うコンビニエンスストアが日本全体に瀰漫するのは当然だった。コンビニエンスストアの発祥には三説あり、大阪マミーとする説(昭和44年)、ココストアとする説(昭和46年)、セブンイレブンとする説(昭和49年)がある。どの説をとっても、スーパーマーケットにくらべてコンパクトな店作り、ならびにワンストップでさまざまな商品を買えるようにしたことに特徴がある。ちなみに、セブンイレブンの一店目で、開店後はじめて売れたのは、店主もまさかと思ったサングラスである事実は象徴的だ。
しかし、その利便さも、競争過多と、出店過多により、限界を迎えつつある。
・ついにコンビニは飽和を迎えるのか
2019年にセブンイレブンが沖縄への出店をおこなう。これで、いわゆる大手三社(セブンイレブン、ローソン、ユニーファミリーマート)は日本四十七都道府県すべてに出店したことになる。近くにあると便利なコンビニは、これまで「○万店飽和説」を常に打破してきた。「3万店飽和説」「4万店飽和説」をそれぞれ突破し成長してきたコンビニエンスストアだが、5万店を突破してからの足取りは重い。
現在、コンビニは5万5千(2017年6月時点)店あるいっぽうで、世帯数は5340万3千世帯となっている(平成27年国勢調査)。調査時期はズレているが、おおむね。970世帯に一つのコンビニがあることになる。
これは数として多いといえるのだろうか。まずは、売上高を比較してみよう。そこで、チェーンストア協会に属するスーパーマーケットの売上高と、コンビニエンスストア協会に属するコンビニの売上高推移を比較してみた。業界では、13兆円の壁といわれており、スーパーマーケットは13兆円の壁から飛躍できずに横ばいに甘んじている。それにたいして、コンビニはまだ緩やかになりながらもスーパーマーケットに近づいている。
しかし、日本人の総人口が変わるわけではなく、むしろ減少傾向にある。パイの取り合いになっており、厳しい状況が続く。たとえば、既存店ベースの前年比売上高を見てみよう。
低成長が見て取れる。新規店をオープンすることで、売上高を伸ばそうとしているものの、既存店の売上高はマイナス、あるいは低成長が続いている。同時に、既存店の客数も見てみた。
こう見ると、新商品のカンフル剤と他業態からの販売商品カテゴリーを増加させることで客単価をなんとか伸ばしているコンビニ業界だが、既存店の客数はあまり訴求性をもっていないことがわかるだろう。
・単身世帯の伸びとコンビニエンスストア
ここでデータを見てみると、たしかにコンビニエンスストアの歴史上、単身世帯の伸びに乗じて出店数を伸ばしたのがわかる。日本の人口は減るといわれつつも、単身世帯が増加し、それにしたがい小口需要が増えていったのだ。
(http://tpdb.jp/townpage/order?nid=TP01&gid=&scrid=TPDB_GG01)
しかし、総務省等の予想によると、この世帯数の伸びもピークを迎える。コンビニにとっては、厳しい時代が到来しようとしている。
(http://www.stepon.co.jp/column/2005/1215/)。この連載では次に業界対応についてとりあげる。
<つづく>