会社を設立してからの地獄の日々~連載⑥(坂口孝則)

日テレ「スッキリ!!」にレギュラー出演するまでの話を前回しました。そこで、この番組でお会いしたテリー伊藤さんについて話したいと思います。

私は初回のとき、大変緊張していたのを覚えています。指定時間よりもだいぶ早めに到着しました。なぜならば、テリーさんに挨拶をするためでした。「なんと挨拶したらいいかな」と何度も考えながら向かいました。すると、テリーさんは楽屋にいませんでした。というのも、番組のスタッフとともに、あちこちを歩き回り、よりよい番組にするために細かな指示を出すためです。

プロデューサーの方と私が探して、やっとテリーさんを廊下で見つけました。すると笑顔で「うんうん、よろしくねー」とおっしゃってくれ、しかも、なんと私のこともだいたいわかっていた様子でした。簡単な打ち合わせのあとにスタジオに向かいました。通常は数分前に行けばいいのですが、15分前に行くと、テリーさんがすでにスタッフと談笑していました。

私は一気に、テリーさんの著作をほぼすべて読んでいることや、「天才たけしの元気が出るテレビ(テリーさんが総合演出)」を見ていたことなどを話しました。とくに「お笑い北朝鮮」などの衝撃を伝えました。すると、感心してくれ、それなりに話が弾みました。

さて、テレビの生番組には、瞬発力と反射神経が要求されます。学者で失敗するのが、ここなのです。つまり、台本にあることしか訊かれないと思っている。だから、予想外のことを質問された際には、まったく反応できないのです。

これに対応するには、つねに「台本にはないけれど、なんか訊かれたらどうしよう」と考えておくことです。これしかありません。会議で発言を求められるケースは多いでしょうが、けっきょくこれも「何を発言すべきか」を頭のなかで反復しながらシミュレーションするのが一番でしょう。

ところで、テリーさんの話に戻ります。

えらく感心したことがあります。テリーさんといえば、井手らっきょさんの頭をヘルメットのペインティングして警察署の前を往復させ、いつバレるかを検証したり--(笑)、あるいは早朝ヘビメタといって、有名人をメタルの演奏で起こしたり(笑)、たこ八郎さんに東大生の血液を入れたらIQがあがるかを検証したり(笑)、おそるべき企画力で有名です。それらの話をふったのですが、ご本人は「いや、あれ、もう昔のことだから」としかいわないんですね。

60歳以上で、あのキャリアだったら「昔の俺は……」といった自慢の一つくらいあってもいいですよね。でも、まったく昔のことを振り返らない。そして、自慢しようとしない。そして常に克己たる態度をとる。ビジネスマンとして優秀だと感じました。だって「いまあんなことやっても面白くないから、その話はやめようよ」とおっしゃるんですね。

それにしても、氏は私を常に「分析マンだなあ」と呆れていらっしゃいました。その発言の裏には、「数字以外の話もしたほうがいいよ」という意味だと思います。ちなみに、この点はいまだに私の課題です。

(つづく)

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