グローバル調達が進まない理由(牧野直哉)

先日、バイヤーの勉強会に参加しました。テーマはグローバル調達。グローバル調達の発展段階毎に想定される課題と、真のグローバル調達を実現させるために必要な行動について討議しました。

そんな中で、販売市場も日本国内、調達先も国内サプライヤーである企業が、グローバル調達を実現するはじめの一歩として、海外サプライヤーから購入する場合、いったいなにが障害になるのかに話が及びました。

「サプライヤーの監査をするための海外出張の予算がない」といった話から、最終的には、自社の要求仕様を、的確にサプライヤーに伝える能力が不足しているのではないかとの結論に至りました。海外サプライヤーと取引を始める前に、異なる言語によるコミュニケーションの障害のない国内で、より良いサプライヤー探しを行なっているかどうか。残念ながら、その場での多くのバイヤーが「やっていないね」と苦笑いだったのです。

新しいサプライヤー探しを行なっていない理由、それは、従来から取引のあるサプライヤーであれば、すべてを説明する必要はありません。もし、仕様面で不明点があっても、過去の取引関係によって確立された人間関係を利用して、サプライヤーが要求部門に確認します。これが、新しいサプライヤーともなると、人間関係がない分、確認の場を設けたり、経緯を説明したりといった手間が発生します。

もっと突っ込んで考えれば、仕様書化・図面化できない要求事項の存在が、新たな関係構築の可能性を低くしています。私の勤務先では、技術者から希望するサプライヤーの条件として「ちょくちょく打ち合わせができる」といった声が寄せられます。この条件を真面目に考慮すると、自社を基点にした半径××キロに所在するサプライヤーになってしまいます。

要求事項をキッチリ図面化、仕様書化できるかどうか。自らの希望や意志を明文化・図示化できる能力があるかないかによって、グローバル調達が進むかどうかが決まるのです。もしかすると、海外のサプライヤーとやり取りを始める前に、国内の新しいサプライヤーと取引を模索して、自社の明文化・図示化能力を探った方が良いかもしれません。不十分な要求で、希望の後出しの癖がある企業では、グローバル調達などできないのです。グローバル調達の成否は、国内新規サプライヤーの開拓によって、ある程度成否が読めるのです。

<了>

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